国が遺構の保存制度を設ける
こうした複雑な住民感情の中、自治体により対応には温度差があり、前記の「第18共徳丸」のように遺構保存を断念するケースが続出。特に、財政的な負担も保存断念の大きな理由であったことから、国も、ようやく重い腰を上げ、2013年11月、遺構の保存制度を設けた。
市町村にそれぞれ1か所限定、維持管理費は認めないというように、厳しい制限があるものの、初期費用を国が負担することになり、早速、その適用第1号として、岩手県宮古市の「たろう観光ホテル」の保存が決まった。同ホテルは6階建ての4階まで浸水、1、2階はさびた鉄骨がむき出し、3階も窓や壁が壊れたままで、今回、市が建物を無償で譲り受け、土地を購入し、2億1000万円の補助を受けて保全工事を実施し、2015年度から公開予定。市が維持のため基金を創設し年間500万円と見込む費用は来場者から集める「協力金」で賄う計画だ。