従来型新幹線の売り込みも継続
地上から約10センチ浮上し時速500キロで安定走行するリニア新幹線は、JR東海が誇る独自技術。通常ならライセンス料が発生するところだが、米国がコスト減を好感して採用し導入実績ができれば、その他の海外でも採用される可能性が高まるため、「損して得とれ」となるとの見立てだ。日本国内で進めるリニアプロジェクトにとっても、車両や軌道の量産効果でコスト低減の可能性がある。日本政府はワシントン-ボルチモア間で見込まれる約1兆円の総工費について、その半分を国際協力銀行経由で融資する方針で、まさに「官民一体」となって受注を目指している。
ただ、米国以外への展開といっても、リニアのような「超」のつく高速鉄道を想定した構想を打ち出している国は、実はまだないのだ。国の財政基盤がしっかりして利用客も見込めるところがあるかどうか、未知数でもある。
一方、従来型新幹線を海外に売り込もう、という動きも引き続きある。新幹線を運営する東海、東日本、西日本、九州のJR4社のほか、東芝や三菱重工業など鉄道メーカーなども含む25社・団体が参加する「国際高速鉄道協会」が4月10日に発足。米国やアジアでの受注を目指し、従来型新幹線の安全性の高さなどをアピールする。具体的にはマレーシアとシンガポールを結ぶ高速鉄道計画などが目標。ひいては新幹線を「世界標準技術」と認識されるようにしたい、との考えだ。
ただ、従来型新幹線が安全で速いことは知られていて、それでもなかなか受注とはいかないのも、コストが高いから。リニアにしても従来型新幹線にも増して高い。官民挙げての売り込みはいいが、コストをいかに低減するのか。克服すべき課題は大きい。