背景には複雑な社内事情
今回のランバクシーの実質売却で、第一三共は6年を費やし、ようやくランバクシーに絡む混乱から逃れられることになる。しかし、そもそも第一三共は後発医薬品市場への参入が遅れており、ランバクシー買収によって一気に後発医薬品市場に本格参入し、世界的な競争力を強化しようともくろんだものだった。それだけに、第一三共にとってランバクシーを手放すことは、後発医薬品事業を再び初めからやり直さねばならないことを意味し、有望市場での競争力低下による打撃は避けられそうもない。
今回のランバクシーの事実上の売却の背景には、第一三共内の勢力事情があるとの指摘もある。元々、ランバクシーの買収を進めたのは旧三共出身の庄田隆会長で、ランバクシーは「旧三共案件」とされている。一方、ランバクシー売却を主導した中山社長は旧第一出身。業界関係者が「遅きに失した」と口をそろえるランバクシー撤退がなかなか実現しなかったのは、旧三共と旧第一の勢力争いがあったため、ともささやかれる。今回、旧第一勢力が優勢に立ったことで、ようやく旧三共案件の打開に至った、との見立てだ。
そんな複雑な社内事情もあるためか、東京都内で開いた記者会見で、中山社長は「買収で得たものは大きかった」と述べ、ランバクシー買収を「失敗」とは認めなかった。さらに、「ランバクシーへの支配権は失うが、サン・ファーマとの関係を強固にし、(後発医薬品との)ハイブリッド経営を加速したい」と強調してみせた。
だが、言葉とは裏腹に出席者の表情は一様に険しく、先行きの厳しさをみせつけた。