沈没した韓国の旅客船のオーナーは、新興宗教の教祖をしていると韓国メディアが報じ、その教えが事故に関わった疑いも指摘されている。あまりにも不可解な事故は、それで説明がつくのではないかともいうのだ。
今回の事故は、発生直後から、耳目を疑うような報道が次々に出た。
オーナー周辺では、集団自殺、沈没事故…
まず、船長らが、乗客を置き去りに船から逃げ出したことだ。そして、なんと船長らは、月給も安い契約社員であることも分かった。船についても、3倍以上の過積載であることが判明し、コンテナは鎖でなくロープでつながれていた。さらに、安全教育に5万円ほどしかかけていないことも分かって…。
そんなずさんな船会社「清海鎮(チョンヘジン)海運」のオーナーが、兪炳彦(ユ・ビョンオン)氏(73)だ。
報道によると、兪氏は、1941年に京都で生まれ、戦後に韓国へ戻った。結婚後の62年に、義父とともに宗教団体を立ち上げ、80年代には遊覧船事業にも乗り出した。86年には、事故のあった仁川―済州島間の運航免許も取得している。このときは、当時の全斗煥大統領サイドと深い関係があったとされている。
兪氏の名前がクローズアップされたのは、自らが率いる「キリスト教福音浸礼会(通称・救援派)」と関係する宗教団体の教祖と信者ら32人が87年に集団自殺したときだ。浸礼会にお金が流れて教祖側が多額の負債を抱えたとも言われ、兪氏は、検察から取り調べを受ける事態にまでなった。
これは後に、信者から金をだまし取っていた関連の詐欺事件で起訴されることになり、91年に懲役4年の実刑判決を受けて服役している。
一方、遊覧船の経営でも、90年に沈没事故を起こし、15人が死亡する惨事になった。97年には経営破たんしたものの、99年に前出の清海鎮海運を立ち上げていた。
兪氏は、韓国内外のグループ会社30社で様々な事業を手がけ、一族で内外に2400億ウォン(約240億円)の資産があると言われている。宗教団体は、内外に信者が約20万人いるほどまで成長した。