消費増税前の「駆け込み需要」は記録的だった。日本百貨店協会がまとめた2014年3月の全国百貨店売上高(4月17日発表)は、前年同月比25.4%増の6818億円と、1997年の増税前(同23.0%増)を上回った。
日本チェーンストア協会が4月21日発表した3月の全国スーパー売上高も、同9.4%増とこちらも1997年3月(同8.4%増)を上回った、百貨店、スーパーとも1989年の消費税導入時に次ぐ25年ぶりの伸び率を記録した。
名古屋、大阪、神戸は3割以上増加
百貨店協会は、東京、横浜、京都、福岡など主要10都市と、それ以外の北海道、東北など全国8地区の集計を行っている。それによると、すべての都市、地区が2ケタの伸び。中でも名古屋37.3%増、大阪32.1%増、神戸30.0%増と、3都市は3割以上増えた。地区別では四国が30.6%増。
全体の売り上げの約4分の1を占め、最も構成比が大きい東京は25・5%の伸びだった。全体では、1989年3月(35.3%増)以来の高い伸び率だった。
商品別では、高級ブランドのバッグや靴など「身の回り品」が38.6%増、美術・宝飾・高級時計などの「雑貨」が67.2%増と、1965年の統計開始以来、最も高い伸びを記録。一方、全体の3分の1強を占める衣料品は18.5%増、同約2割を占める食料品は5.0%増と、1997年3月をそれぞれ下回った。売れたのは高額品が中心だったようだ。
一方、スーパーの3月売上高も好調だった。衣食住のうち、最もよく売れたのは、保存がきく住関連。日用雑貨20.2%増、医薬・化粧品29.3%増、家具・インテリア18.4%増、家電製品38.5%増で、住関連だけで22.1%増だった。衣料品は9.5%増、食料品は5.7%増。食料品は保存がきかない商品が多いため、伸び率は低めだった。2013年度の売上高も0.8%増の12兆9524億円と、17年ぶりのプラスだった。こちらは食料品1.3%増、住関連2.2%増と堅調だったが、衣料品は4.5%減と低調だった。
反動が心配
百貨店にしてもスーパーにしても、事前には「今回の駆け込み需要は、良くて1997年並み」との見方が多かった。1997年時よりも消費者は冷静で、「無駄な買い物はしない」との実感があったためだ。駆け込みの「山」が低い分、その後の「谷」も浅いと読んでいた。
ところが蓋を開けてみると、3月下旬にかけて大きく伸びた。消費を刺激しようと、各社は「まとめ買いセール」などを相次いで開催。景気回復基調も手伝って、売り上げを押し上げた。
業界関係者の心配は、反動の「谷」が深くなって、元に戻るまで時間がかかってしまうこと。4月に入り、売り上げの減少に見舞われているものの、「日を追うごとに反動減は小さくなっている」(百貨店協会の井出陽一郎専務理事)、「予想を超えるような大きな反動減ではない。順調に戻りつつある」(チェーンストア協会の井上淳専務理事)と、まずまずの手応えのようだ。
夏のボーナス増が予想されていることも、小売り各社にとっては好材料。ただ増税によって節約志向が高まる可能性もあり、消費が本格回復に向かうか、なお不透明感が漂う。