「殺人罪にも等しい」セウォル号船長 5年以下の禁錮か罰金は軽すぎる、の声高まる

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   韓国のセウォル号沈没事故で船や乗客を見捨ててわれ先に脱出した船長に、どのような刑罰が下るのか、注目されている。業務上過失致死などの適用では刑罰が軽いとみられるからだ。

   現在、船長らは韓国捜査当局に逮捕、取り調べを受けている。逃げ出したときのようすが徐々に明るみになり、「セウォル号の悪魔」「乗船員の恥」などと激しく非難され、韓国内外のインターネットで吊し上げられている。

救助の際には「一般市民」と偽る

   事故当時のようすが明らかになるにつれ、この「無責任」船長のとった行動の酷さもまた明かるみになってきた。

   多くの高校生を含む、約300人もの乗客を置き去りに、沈む船から最初に逃げ出したイ・ジュンソク船長。そればかりか、救助の際には「一般市民」と偽り、その後は宿舎で海水に濡れた1万ウォン札を乾かしていたらしい。

   さらには、かつて韓国・済州島の新聞(2004年元日付)のインタビューで、自らが海難事故で自衛隊のヘリコプターで救助された経験を語っていたことが発覚。そこでは「今日も明日も、私は船と一緒にいるつもりだ」などと、「海の男」をアピールしていたとされ、非難の声が日に日に大きくなっている。

   しかも、その声は韓国内にとどまらない。中国ではツイッターで、

「さすがに酷すぎる。学生の親たちはやりきれないだろうな」
「船長は最初に乗って、最後に降りるべき」
「乗船員として恥ずかしくないのか」

などの「つぶやき」が相次いだと、レコードチャイナ(2014年4月17日付)が伝えている。

   また、米ニューヨーク・タイムズ(4月20日付)は、イ船長がインターネット上で「セウォル号の悪魔」と呼ばれている、と報じた。

   韓国の朴槿恵大統領は4月21日、首席秘書官会議でセウォル号沈没事故について、「船長と一部乗組員の行為は常識的に容認できない、殺人にも等しい行為だった」と厳しい表現で非難した。

   20日現在、セウォル号の事故では56人の死者が判明。246人がなお行方不明のままだ。

伊コスタ・コンコルディア号事故の船長は2697年求刑

   船長のとるべき行動として、よく引き合いに出されるのが1912年のタイタニック号の沈没事故だ。このとき、船長は船とともに海に沈んだ。

   米ニューヨーク・タイムズ(2014年4月20日付)はこうした船長の「誇らしい伝統」を、2012年にイタリアの豪華クルーズ船、コスタ・コンコルディア号を捨てて脱出したフランチェスコ・スケッティーノ船長と、イ・ジュンソク船長が「破壊した」と、指摘している。

   「海上における人命の安全のための国際条約」は、船長に船と乗客全員の安全に対する責任を負わせている。日本でもその「精神」は船員法に込められており、1955年の宇高連絡船「紫雲丸」事故(旧船員法)をはじめ、たびたび船長が殉職してきた。

   ただ、現行の船員法に「船長の最後退船義務」はなく、「船長の在船義務」と「船長の船舶危険処置」を求めているに過ぎない。船長が最初に逃げることが許されないのはわかるが、法的な責任となると微妙ではある。誘導もしなければ、業務を怠り乗員・乗客を死なせたとみなされ、業務上過失致死などの罪は免れない。

   一方、韓国の中央日報(4月18日付)によると、逮捕されたイ船長らは業務上過失致死または重過失致死傷の容疑が適用されるとみている。

   しかし、法定刑は5年以下の禁錮または2000万ウォン(約200万円)以下の罰金にすぎない。50人超が亡くなり、まだ200人超が行方不明の大惨事を引き起こしたことを考えると、「あまりに処罰の程度が軽い」という声も大きくなってきた。

   実際に、伊コスタ・コンコルディア号の座礁事故で、真っ先に逃げた船長には2697年刑が求刑されているという。

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