「ボールが飛びすぎた」と告白したプロ野球。
責任を押しつけられたミズノは謝罪のうえ2014年4月17日に基準内統一球を4月中に使用することを明らかにしたが、これで一件落着となるのか。
「お詫びに入場料無料にします」くらいの誠意が欲しい
記憶に新しい2013年6月に発覚した「飛ぶボール無断使用事件」。それから1年も経っていないのに、今度は「飛びすぎるボール問題」が発覚。昨年のあの騒ぎはなんだったのか。
事の起こりは日本野球機構(NPB)の抜き打ち検査だった。開幕直後の3月29日に使用した6球場のボールの反発係数をテストしたところ、5球場で係数の上限を上回った。最も数値が高かったのは東京ドームで、基準内の西武球場でも上限ぎりぎり。
「すぐ調査する」と熊崎コミッショナー。監督の中には「おかしいと思っていた。責任を取ってもらいたい」との声も出た。あきれかえっての言葉だった。
この「ボール問題」はファンを欺くものである。昨年の騒ぎの責任をとって当時の加藤コミッショナーは辞任。その後を継いだのが熊崎氏。つまりボール問題の解決は後任コミッショナーの最初の仕事だったはずである。
今年になっても「ボールが飛びすぎる」との疑義が選手たちの間で生まれていた。その声を無視できなくなり、抜き打ちテストの形をとり、メーカーに突きつけたのだろう。しかし、NPBの管理責任は免れない。
本来なら開幕前にコミッショナーのもと、審判員、各球団のユニホーム組を含む責任者らが立ち会い、係数テストを行うべきである。その模様をメディアを通じてファンに知らせるのが入場料を取るビジネスのやり方だろう。
反発係数の基準値は0.4032~0.423としている。問題のボールは上限を基準にして作っていたといっていいだろう。中間を基準にしていれば、飛ぶとか飛ばないなどの問題はまず起きない。係数の上限を基準にしていたとすれば、それは球界の意向が働いていたと勘ぐられても仕方がない。
ボールが飛んでホームランが増えることは、打者にとって大歓迎。投げる投手にとっては厳しいだけである。
「選手の生活に関わる」
選手会が注文をつけるのは当たり前である。シーズン終了後の契約更改では投打の査定に響く。極端に言えば、大きな外野フライがサヨナラ本塁打になれば、それは天と地の差になる。
今回の騒ぎはミズノが平謝りで、4月中に「適合球」に切り替えることを明言して騒ぎは収まった。NPB、球団、メーカーが了解しての一時的落着なのだが、ファンへはどうするのだろう。
ここは2年続けての違反球使用の不祥事なのだから、おわびとして球場への無料招待くらいのあいさつがあってもいいのではないか。プロ野球界は自らに対するペナルティーを科す姿勢がほしい。
(敬称略 スポーツジャーナリスト・菅谷 齊)