口座数が膨大なので金融機関には負担
しかし、実現には多くの課題がある。日本の個人預金の口座数は、ゆうちょ銀行などを含めると10億口座以上。政府はまず、新たに開かれる口座を対象にマイナンバーを付与し、その後、既存の口座にも拡大する方向で検討している。個人資産をより正確に把握するという目的を達成するためには、すべての口座とマイナンバーが結びつかないと意味がないが、口座数が膨大なだけに各金融機関の事務負担は相当大きくなりそうだ。
全国銀行協会は、預金口座へのマイナンバー付与について、社会保障充実や負担の公平性確保という趣旨には理解を示している。ただ、口座数が膨大なうえ、住所が変更されないままで顧客との連絡が取れないケースや、長年使われていない休眠口座があるなど、実務上の問題点を指摘。預金者にとって番号付与のメリットがすぐに感じられるわけではないため、手続きへの協力を得にくい可能性にも言及している。
費用面の負担も膨らむ恐れがある。全銀協は2月末に開かれた政府税調の会合で、新規口座に限ってマイナンバーを付与する場合でも300億円の費用がかかるとの試算を示した。こうしたことから、導入時には十分な準備期間をとることや、民間銀行のサービスでもマイナンバーを利用できるようにすることなどを政府に要望している。
そもそも、政府が個人の口座情報を把握することに対し、抵抗を感じる預金者も多いだろう。政府と銀行業界が今後、制度の詳細を検討していくことになるが、制度のメリットについて丁寧に説明することが求められそうだ。