国内製薬最大手、武田薬品工業の次期社長に6月就任する予定のクリストフ・ウェバー氏(47)が2014年4月1日付で入社し、最高執行責任者(COO)に就いた。
いよいよ武田薬品の新体制が始動する。同社が再起に向けたカギとして登用した初の外国人社長はいかに経営のかじを取っていくのか、業界全体から注目が集まっている。
国際化対応と新薬開発が急務
ウェバー氏は英製薬大手、グラクソ・スミスクライン(GSK)出身。GSKでアジア太平洋地域担当上級副社長やGSKワクチン社の社長など重責を担った人物。武田薬品の長谷川閑史(やすちか)社長がライバル社からヘッドハンティングするという異例の引き抜きが話題となった。
長谷川社長は2日、東京都内で開いた記者会見で、ウェバー氏について、「GSKで20年以上の経験をもっている」と述べ、国際的な手腕を持つことへの期待感を示した。さらに、「武田薬品は主力(医薬)品の特許切れの後、相当苦しんできたが、明かりは着実に近づいている。彼にバトンタッチし、さらに明かりに向かってスピードを上げてほしい」と述べた。国際化対応と新薬開発が新社長、ウェバー氏の最大の課題といえる。
世界の製薬業界では新興市場も絡んで競争が激化しており、国内トップの武田薬品といえども埋没しかねない状況だ。同社は米国のバイオ技術企業ミレニアム・ファーマシューティカルズを88億ドル(現在の為替レートで約9100億円)で、2011年にはスイスのニコメド社を96億ユーロ(同1兆3700億円)で買収し、海外売上高比率を5割超にまで高めるなど、グローバル対応を強化している。それでも世界の売上高ランキングではトップ10にすら入れないのが現状で、早急に世界市場で強固な基盤を築く必要に迫られている。
社内改革では対応できない
一方、糖尿病治療薬「アクトス」や前立腺がん治療薬「リュープリン」など、年数千億円規模を売り上げてきた同社の主力医薬品が相次ぎ特許切れを迎えており、同社の屋台骨が揺らぎかねない状況になっている。新薬開発は同社にとって最大の課題だ。ライバル社出身のウェバー氏をトップに登用するという思い切った取り組みは、こうした難しい環境の中で、これまでの延長線上の社内改革では対応し切れないという危機感が背景にある。
ウェバー氏は、初めて公の場に登場した2日の記者会見で、こうした武田薬品の現状を受け、「世界各地で培った経験を生かしたい」と語り、さらに、「新薬や革新的医薬に対するニーズは新興市場だけでなく、欧米や日本でも大きく、それが私たちの将来の基盤になる」と強調。グローバル規模で研究開発や販売などの展開を強化していく方針を明らかにした。
異例のトップ人事で新生・武田薬品に生まれ変われるか、ウェバー氏の手腕が注目される。