未成年者の喫煙や飲酒を黙認するなどして、その保護者や販売した小売店主らが書類送検された。神奈川県警が未成年者喫煙禁止法違反などの容疑で、33人を一斉に摘発したのだ。
警察庁のまとめでは、子どもの喫煙やたばこの購入を止めず、2013年に同法の違反容疑で書類送検された大人は1259人で、10年前の70倍にのぼった。保護者の摘発が増えているらしい。
神奈川県警が33人を一斉摘発、うち保護者は23人
神奈川県警少年捜査課は、未成年者喫煙禁止法違反の疑いで保護者22人と小売店主や従業員ら9人の計31人を、また未成年者飲酒禁止法違反の疑いで父親とスーパーの従業員の2人を、2014年4月16日にそれぞれ書類送検した。
未成年者の喫煙や飲酒で、県警が33人を一斉摘発するのは初めて。いずれも容疑を認めているという。
とはいえ、こうした未成年者の喫煙や飲酒にからむ摘発は減少傾向にある。神奈川県警によると、摘発に至らない、補導された少年らは2012年に9万3908人。そのうち、喫煙は3万1363人、飲酒は1664人で全体の35.2%を占めていた。前年と比べて36.1%減っている。
今回の摘発も、多くはこうした少年らの補導や別の事件の家宅捜索などで判明した。
また、神奈川県警が未成年者喫煙禁止法違反の疑いで摘発したケースも、2011年の191件をピークに、12年169件、13年160件と減少。少子化に加えて、2008年に成人識別カード「taspo(タスポ)」が導入されたこと、対面販売でもたばこや酒を買うときには年齢確認が必要になったことが、減少の背景にある。
ところが、2013年の保護者の摘発件数は、08年の8倍にあたる112件に増えた。読売新聞(2014年1月22日付)によると、神奈川県警のまとめでは13年の摘発件数の7割を保護者が占めたという。
未成年の喫煙や飲酒について神奈川県警は、喫煙や飲酒は成長期のからだや心に悪影響を与え、繰り返すうちに薬物への抵抗感や罪悪感が低下して薬物乱用や、他の非行へと踏み込んでしまう危険性が高くなる。「小さな芽のうちにしっかりと対応してほしい」と、訴えている。
「世間体を気にして自宅で吸わせた」「子どもの吸いたい気持ちわかる」
未成年者喫煙禁止法は、保護者(親権者)が未成年者の喫煙を制止しなかった場合の罰則を科料(1万円未満)と定めている。未成年者は処罰されない。
罰則としては「たいしたことはない」のかもしれないが、書類送検された保護者の「言い訳」には驚かされる。
「子どもが聞き入れないので、あきらめた」
「世間体を気にして外で吸うならと自宅で吸わせた」
「ねだられて定期的に買い与えていた」
「自分が吸うので、子どもの気持ちがわかる」
なかには「タスポ」カードを貸して買わせたケースもあった。いくら未成年者がたばこを買いづらくなっても、保護者が容認しては「処置なし」だ。
一方、小売店主らは「年齢確認をするとトラブルになる」などと供述している。
インターネットには、
「吊し上げのつもりなんだろうな」
「やり過ぎ。こんなんで送検しても検察はいい迷惑じゃねーの?」
「酒やたばこぐらいでこんな大騒ぎしなくてもいいじゃんか」
といった、警察の「行き過ぎ」を指摘する声もなくはない。
教育評論家の森口朗氏は、「昔から未成年の子どもの喫煙を黙認している親はいましたし、また法律が変わったわけでもありません。ただ、最近は国際化の中で『ルールをきちんと守る』ことが求められるようになり、たとえ親子であっても『守るべきことは守る』という認識を強くもつ必要があります。今回、そのことをはっきりと突きつけたという点では、神奈川県警の快挙と言っていいと思います」という。