血圧「140」を超えると高血圧、「130」でも高め――。これまで、そう信じていた人は少なくない。ところが、血圧は「収縮期血圧が147以下、拡張期は94以下」であれば正常、という調査結果も出てきた。
一般に、健康な人の血圧は「収縮期血圧(上)が140mmHg未満、拡張期血圧(下)が90mmHg未満」とされている(「高血圧治療ガイドライン」日本高血圧学会2009年)。上下とも、これ以上であれば「高血圧」と診断されてきた。
曖昧な基準値、2000年にも「見直し」
日本人間ドック学会と健康保険組合連合会は、2011年の1年間に人間ドックを受診した150万人のうち、病気にかかっておらず、ほとんどの検査項目で異常な値がない健康な約1万人のデータを解析、正常とされる数値の範囲を調べた。
その結果、これまで「正常」としていた基準値が覆った。
血圧の場合、現行正常とされる数値は「上140/下90未満」(家庭で測定した場合、135/85mmHg)だが、これが「上は147まで、下は94まで」となった。同学会は、「現在の健康診断で正常とされている基準値の範囲を大幅に緩めるべき」としている。
高血圧と診断されている日本人は、全国に約3970万人(国民健康・栄養調査2008年版)で、50歳代の10人に1人が高血圧といわれる。高血圧になると、心臓などに負担がかかり、心筋梗塞や狭心症、脳出血や脳梗塞、クモ膜下出血などを引き起こす。発症すれば命にかかわり、一命を取りとめても身体に麻痺が残ってしまうこともある。
そうならないために、血圧を下げるクスリ(降圧剤)を飲んでいる人は多いはず。最近は、「トクホ」飲料のテレビCMが「130を超えたら…」とPRしていることもあって、「130」を目安に予防している人も少なくないかもしれない。
ただ、血圧の基準値はとても曖昧だ。人間ドックや企業の健康診断で正常かどうか判定している数値は、日本人間ドック学会が公表している判別値を使っている施設もあれば、日本高血圧学会が定めた診断基準を利用する施設もあるなど、バラバラな状況にある。
しかも日本高血圧学会が定めた現行の「上140/下90未満」の診断基準(降圧薬治療開始基準)は、2000年に引き下げられたもので、それまでは「上160/下95以上」を高血圧と診断していたという。
「高血圧は薬で下げるな」(浜六郎著、角川oneテーマ21刊)によれば、2000年の基準値の改定は、「2500万人が新たに『高血圧』の患者となり、降圧剤の売り上げは『3倍以上、1兆円』になるだろう」としていた。