「消せるボールペン」の悪用がめだっている! 公文書偽造、勤務表に請求書「水増し」着服

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   何度も書いては消せて、痕跡が残らないことをいいことに、「消せるボールペン」を悪用した不正が後を絶たない。

   製造・販売するパイロットコーポレーションは、「証書類や宛名書きには使用できない」ことを商品に明記。「便利なものなので、正しく使ってほしい」と、用途の徹底を呼びかけている。

世界で9億2000万本を販売する大ヒット商品!

「消せるボールペン」は世界で9億本超も売れるヒット商品!(画像は、「パイロットコーポレーション」のホームページ)
「消せるボールペン」は世界で9億本超も売れるヒット商品!(画像は、「パイロットコーポレーション」のホームページ)

   パイロットコーポレーションによると、消せるボールペン「フリクションボール」に使われている「フリクションインキ」は、消色温度(60度以上)が設定されているため、筆跡をボディ後部の専用ラバーで擦ることで生じる摩擦熱によってインクが無色に変わる。

   修正液などを使えば、その痕跡が残るのでわかるが、消せるボールペンの場合は消しカスが出ず、鉛筆やシャープペンシルの消し跡に比べて消し残りも少なく、何度も書いたり消したりできるのが特徴。修正した痕跡も残らないという。

   2006年に欧州、翌年に国内で発売を開始。13年末時点で、世界で9億2000万本が販売された大ヒット商品。同社は、「書き心地や使い勝手のよさはボールペン。用途は鉛筆やシャープペンシルに近いです」と話している。

   そうした中で、消せるボールペンを悪用した不正が後を絶たない。

   2010年8月、奈良県警が車検合格後に申請書の車体番号を書き換え、合格していないクルマの車検証の交付を受けたとして、自動車板金業者らを道路運送車両法違反の容疑で逮捕。12年8月には大阪府警の男性巡査部長が「消せるボールペン」で調書を作成したうえ、容疑者が署名押印した後に勝手に書き直して改ざんしたとして、虚偽有印公文書作成・同行使の疑いで巡査部長を書類送検し、減給10分の1(6か月)の懲戒処分とした。

   三重県津市では13年5月、学校給食協会の臨時職員の女がパンや米飯代の請求金額を「消せるボールペン」で不正に水増しするという手口で約4200万円を着服し、詐欺容疑で逮捕された。同9月には茨城県土浦市消防本部で、時間外勤務手当約70万円を不正受給したとして、男性主任が懲戒免職に。給与担当だった男性は「消せるボールペン」で勤務管理表を書いて上司の決裁を受け、市人事課に持って行く途中に時間を書き換えて水増ししていたという。

   どれもその場しのぎの、決して「巧妙」とは言えない手口のように思えるが、パイロットは「(ふつうのボールペンと)筆跡に違いがないので、一見しただけではどちらで書いたものか判断しづらいでしょう」と話している。

見分けるには「擦ってみること」?

   「消せるボールペン」をめぐっては、不正に至らなくても、文書作成に「レッドカード」を突きつけるケースが増えている。

   名古屋市は2013年5月、監査人が「行政文書の作成における不適当な筆記具の使用について」と題した意見書を提出。それによると、市長室広報課や市会事務局総務課などの複数の部署で、消せるボールペンを使用して金額などを記載した見積書を用いたり、契約書類や行政文書を作成したりするケースがみつかった。

   また、14年3月には川崎市が定期監査報告で、財務文書の作成に消せるボールペンを使用していた事例がみられ、「適切ではない」と指摘された。名古屋市のこともあり、監査委員らがとくに注意し、書類をこすって調べたところ見つかったという。

   最近は大学などの入学願書などでも、「消せるボールペンの使用禁止」の注意書きがみられる。パイロットは「公的な書類や宛名などの消えては困るものへの使用は避けるようにしてほしい」というが、よい見分ける方はないのだろうか――。

   「フリクションインキ」には、冷やすと発色するという特徴もあるが、零下10度以下というから難しい。パイロットは「熱をもつと消えるので、擦ってみることは有効だと思います」と話す。

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