週刊文春の2014年4月17日号(首都圏では4月10日発売)に掲載された北朝鮮問題をめぐる記事をめぐり、記事を執筆した東京新聞の五味洋治編集委員が「不快な思いをされた方にはお詫びいたします」とツイッターで陳謝した。
記事自体は、北朝鮮が韓国の朴槿恵(パク・クネ)大統領への批判を強めていることを淡々と描いたものだったが、その記事についた朴大統領の写真のキャプションが「高齢処女だなんて、キムチ悪いわ」。キャプションは五味記者ではなく文春編集部がつけたものだが、ネット上では「我が目を疑う」と批判が殺到していた。
北朝鮮当局は文春コラム「今週のバカ」を読んでいた!
文春の記事は、「強まる北朝鮮恫喝 朴槿恵の攻撃材料についに小誌まで引用」と題して掲載された。記事では、週刊文春記事が国営朝鮮中央通信に引用されたことを紹介している。
今回の文春記事が指しているのは、朝鮮中央通信が「南朝鮮執権者の低級な外交」と題して3月31日に配信した記事で、朴大統領が訪米時には「上司の機嫌を取るために議会の演壇でどもりながら上手でもない英語で言いふらして満場の嘲笑の種」になり、フランスや英国訪問では「その国の言葉で演説して鼻持ちならない振る舞いをした」とこき下ろしている。週刊文春の名前は、記事の最後に登場している。
「日本の時事週刊誌『週刊文春』が、朴槿恵が悪口を流す婦女子外交をしているとあざ笑いしたのも、一理ある主張だというべきであろう」
文春の朴大統領批判記事を北朝鮮が持ち上げた形だ。北朝鮮当局は、13年12月5日号に掲載された適菜収氏の連載コラム「今週のバカ」を読んだようだ。コラムでは、朴大統領が外遊先で日本の歴史認識問題を持ち出すことを、
「告げ口というより、井戸端会議で隣近所の悪口を言いふらす『おばさん外交』」
と批判している。
五味記者「写真のキャプションとはいえ、きちんと確認すべきだったと思います」
今回批判を浴びた文春記事は、これらの北朝鮮側の動きをまとめたに過ぎない。その中に、労働新聞が4月1日付で朴大統領を「性格の悪い年を取った処女」と指摘したことも含まれていた。問題となった写真のキャプション「高齢処女だなんて、キムチ悪いわ」は、この北朝鮮側の表現を念頭に置いているようだ。だがこの表現には、
「我が目を疑う。在特会の連中とレベルが変わらないじゃないか」
といった批判が相次いだ。五味記者は記事の署名では「ジャーナリスト」とあるのみで「東京新聞編集委員」の肩書きは使っていなかったが、「東京新聞の購読をやめる」という声も相次いでいた。
これらの批判は筆者の五味記者の耳にも届いたようで、五味記者は2014年4月11日午後、ツイッターで、
「文春の記事のキャプションは編集部の誰かがつけたもので、私は知りませんでしたが、今編集部の人と対応を相談しています。不快な思いをされた方にはお詫びいたします」
「写真のキャプションとはいえ、きちんと確認すべきだったと思います。多方面からのご指摘は謙虚に受け止めます。見出しや写真の扱い、レイアウトはすべて編集部が行っていることをご理解ください」
などと陳謝した。