「マー君の後継者」と期待されている楽天の松井裕樹が乱調だ。
2014年4月9日の日本ハム戦で先発したが、四球連発で4回持たずに交代した。恐れていた自滅だった。
突然の乱調は開幕前から心配されていた
「あんなピッチャー、初めて見たよ」
思わず星野監督の口からそんな言葉が出た。それほど松井の乱れはひどかった。なにしろ突然、ストライクが入らなくなってしまったのだから。
この試合は4回表を終わったところで楽天が1-0でリード。その裏、3四球で満塁となり、続く大引に右中間二塁打を浴び、2点を失い逆転された。さらに四球を出したところで降板となった。
星野監督が言うように、まさに「ひどい」内容だった。
「情けない、です…」
松井はそう振り返るのがやっとだった。言葉が見つからなかったのだろう。試合をぶち壊し、結局2-5で楽天は負けた。
松井はこの日がプロ2度目の登板。初登板のときはまずまずの投球だっただけに、日本ハムに勝つことができれば、一気に調子に乗れると期待した。結果はその逆だった。
実は松井の乱調は恐れていたことだった。それはフォームにあった。投げるときに踏み出す右足に問題があり、キャンプから佐藤投手コーチが指摘して矯正していた。投げた後、必ず踊ったように見えるのがその欠点で、バランスを崩すからコントロールが定まらないのだ。
とりわけストレートの制球がどうしようもなくなる。そうなると武器の大きなスライダーの威力も半減してしまう。
「高校時代はスライダーさえ投げておけば勝てた。ストレートもそこそこ速いからボールでも振ってくれた。プロはそうはいかない。それを実感したのではないか」
評論家の声である。これは専門家たちの共通した意見だ。これまで多くの高校出身のホープたちが直面した「プロの壁」であって、これを打破することがその後のプロ生活を左右する。
簡単にいえば、プロの投手は「打たれないストライクを投げる」ことが生き抜く絶対条件なのである。
星野監督は新人育成に定評がある。何人もの新人王を出している。松井に関しては「早く1勝を」望んでいた。勝ち星が何よりもの効果だからだ。
田中の後継と言われたことも松井にプレッシャーとなっているだろう。今後、弱点をどう克服していくか、にすべてがかかっている。
(敬称略 スポーツジャーナリスト・菅谷 齊)