代行業者による不正な「やらせ投稿」は過去にない
ワシントン州在住の女性に取材すると、イェルプに頻繁にレビューを書き込むという。実は質の高い投稿を繰り返していると認定されたユーザーは、「エリート・スクワッド」に認定される。サイト上で「エリート」と表示され他のユーザーから評価される。またエリート同士のパーティーに招待されるそうだ。「信用できるユーザーは、称賛や批判いずれのレビューも書いており、自分の言葉として表現していると思います」と女性は話す。
一方で、店探しでレビューを参考にする機会もしばしばあるそうだ。「オススメ」に書かれた通りのサービス内容に満足したこともあれば、期待を裏切られてがっかりするケースもあったと明かす。また、レビューを読みながらあまりにも詳しすぎると「もしかしてスポンサーがついているのでは」と疑ってしまうとも話した。
レビューを書くうえでイェルプは、「あなたの行きつけの場所の5つ星レビューを無料のドリンク等と引き換えに書かないで下さい」と要望している。公平な口コミ情報でなく、バイアスがかかる恐れがあるからだ。ただ実際は「店から『レビュー書いたらおまけする』と言われたことがあります」と前出のハワイに住む女性は明かす。
これが度を越すと危険だ。国内では「食べログ」で2012年に「ステマ騒動」が起こっている。飲食店が雇った業者が、「口コミ情報」と称したやらせの書き込みを繰り返してランキングに影響を与えた。閲覧側に気づかせない悪質な方法で、口コミサイトの信用が根本から揺らぐ。消費者庁はこれを受けて、代行業者の「やらせ投稿」によりランキングを変動させるのは景品表示法上の問題があるとの指針を発表した。
イェルプの最高経営責任者(CEO)、ジェレミー・ストッペルマン氏は「日経ビジネスオンライン」2014年4月9日のインタビュー記事で、食べログのような事例は過去にないと明言した。先述の独自開発のソフトにより、不正投稿とみなされたものははじかれる。加えて「おとり捜査のような不正行為摘発の仕組み」まで取り入れているそうだ。イェルプ側が代行業者に成りすまして、店側に、「有料で高評価のレビューを書き込む」とささやくのだという。万一「わな」に引っかかれば、罰として90日間「警告」が店のページに表示されてしまう。サービスの信頼性を担保するうえで、ここまで徹底しているのだ。
米国から日本に上陸したネットサービスの「黒船」はこれまでも、交流サイトのフェイスブックをはじめ成功例は数多い。グローバル級のイェルプに対して、食べログをはじめとする国内勢はどう立ち向かうだろうか。