日本の尖閣諸島(沖縄県石垣市)をめぐって、米国と中国が火花を散らした。
中国を訪問しているチャック・ヘーゲル米国防長官は中国の常万全国防相と会談し、中国が東シナ海上空で防空識別圏を設定したことを批判した。日中間の係争においては日米安全保障条約に基づき、日本への防衛義務を果たす考えを表明した。
中国、尖閣問題は「日本の国有化措置に触発された…」
ヘーゲル国防長官と常万全国防相は2014年4月8日、北京で会談し、東シナ海や南シナ海、朝鮮半島情勢などで意見交換した。AP通信によると、会談の中でヘーゲル国防長官は「事前の協議もなしに、係争となっている島の上空に、一方的に防空識別圏を設定する権利は、中国にはない」と非難した。
中国は2013年末、日本と領有権を争っている東シナ海の尖閣諸島上に防空識別圏を一方的に設定した。また、南シナ海では中国による領有権の主張が違法としてフィリピンが14年1月に国連海洋法条約に基づく仲裁裁判所に仲裁を請求している。
米国はこうした領有権をめぐるトラブルに対して、中国をけん制。東シナ海での防空識別圏の設定については、「こうした行動は結果的に危険な紛争につながる」と危機感をあらわにした。
米国はこれまで、尖閣諸島が「日米安保条約の適用範囲」との立場を示してきたが、「領土問題の解決は当事者同士で行うべき」と主張する中国に配慮し、日本や、南シナ海でのフィリピンの支持を明確に示すことを避けてきた。
ヘーゲル国防長官は「米国は日中が衝突すれば、日本を保護するだろう」とも述べたという。
これに対して、中国の常国防相は「中国は他国の主権や領土保全を決して侵害しない」と述べたうえで、「領有権については妥協も譲歩も取引もしない。一寸の侵入も許さない」と強調。「自ら日本との争いをかき回すようなことはしない。しかし中国政府は領土を保護する必要があれば、武力を使用する準備はできている」と反論したとのことだ。
尖閣問題は「日本の国有化措置に触発されたのが発端」との認識で、「米国は日本の(挑発的)行為に警戒すべきだ」とも述べた。
ヘーゲル国防長官は今回の訪中の前に日本に立ち寄っている。その際に、「中国は隣国を尊重すべき。中国が力を前面に押し出し、尖閣諸島などの現状の変更を試みようとしていることに反対する」と発言していた。
常国防相とはこれが3回目の対面だったこともあり、強い態度で臨もうという気構えがあったのかもしれない。
「武力で他国の主権と領土を脅かしたのは米国だ」
米ヘーゲル国防長官の日本での発言を受けて、中国側の反発はすでに高まっていたようだ。
「ヘーゲル発言」を取り上げた「人民日報」(2014年4月7日付海外版)は、「武力で他国の主権と領土を脅かし、侵犯したのは中国でなく米国だ」と、2003年の米国によるイラク侵攻を例にあげた。
共同通信によると、中国外務省の洪磊副報道局長は8日の記者会見で、「中国は他国の主権や領土保全を決して侵害しない」と反発。中国が近隣国との友好関係を重視しているとしたうえで「中国の主権と領土保全を侵すいかなる国も決して許さない」とも強調した。
また、常国防相とともにヘーゲル国防長官と会談した范長竜・中国共産党中央軍事委員会副主席も「私を含め中国人民全員が不満を持っている」と言ったと、香港メディアが伝えている。
そうしたなか、尖閣諸島周辺の領海外側にある接続水域では相変わらず、中国海警局の船が繰り返し航行している。3月22日からは16日連続。同29日には一時領海に侵入した。4月6日にも、3隻が航行しているのを海上保安庁の巡視船が確認している。