日本取引所グループ(JPX)傘下の東京証券取引所と大阪証券取引所が、金融派生商品(デリバティブ)の市場を大証側に集約し一本化した。2013年7月に現物株市場を東証側に集約したのに続く、東証と大証経営統合の総仕上げとなる。
ただ、デリバティブ市場は現物株より利益を挙げやすい分野なのに世界の取引所に出遅れており、国際競争に生き残る戦略が問われている。
大阪取引所(大阪取)に名称を変更
デリバティブ市場の集約に合わせ、大証は14年3月24日、「大阪取引所(大阪取)」に名称を変更した。「デリバティブ専門であると同時に、取り扱う金融商品が幅広いことをアピールする意図がある」(JPX幹部)。
今回の市場統合により、東証で取引されてきた東証株価指数(TOPIX)や国債の先物など14の商品が大阪取に移った。東証のデリバティブ市場の取引時間は午後11時半までだったが、従来から「翌日午前3時まで」だった大阪側に合わせる形で取引時間を延長。大阪取は3月24日に新規上場したインドの株価指数先物を含めて22商品が取引される市場となった。4月7日には償還期間が20年の超長期国債の先物取引も約12年ぶりに再開される。
大阪取の山道裕己社長は「投資家の利便性向上を取引拡大につなげたい」と語った。市場統合によるコスト削減効果を生か し、取引の24時間化などが検討される可能性もある。13年7月に実施済みだが、東証、大証で別だった証拠金口座が一本化されていることも投資家の利便性を高めている。
世界のデリバティブ市場に互して戦えるかどうか
大阪取は2016年に取引システムを更新する。これによってより高速の取引を可能にし、 投資家から見た魅力を高めたい考えだ。
今後の課題は新生「大阪取」が世界のデリバティブ市場に互して戦えるかどうか。世界の売買高ランキングでは、JPXは14位に甘んじており、売買高は首位の米CMEグループの8~9分の1程度にとどまる。インド、ブラジル、ロシア、韓国といった新興国の取引所にも大きく水をあけられている状況だ。東証に 集約した現物株市場の売買代金が世界3位にランキングされているのと比べても見劣りするのは明白だ。
多くの上場企業を管理しなければならないなど公的な面が強く、運営コストもかかる現物株市場に比べ、市場参加者にプロ の投資家が多いデリバティブ市場は利益を挙げやすいうえ、今後の成長も期待されている。特にアジアは世界的に見てもまだまだ経済成長を続ける地域だけに、デリバティブ市場の重要性も増していくと見られている。
成長のカギは、金や原油を扱う東京商品取引所との統合
JPXのデリバティブ市場の成長のカギを握るとされているのが、金や原油などの商品先物を扱う東京商品取引所と統合し、取り扱い品目を拡充することだ。2011年秋に東証、大証が経営統合を決めた時からJPX側は意欲的だが、東商取を監督する経済産業省が首を縦に振らないため、 なかなか話が前に進まない。
しかし、赤字続きの東商取がコストのかかる自前のシステムを抱えて生き残れると見る関係者はほとんどおらず、JPXへの合流は不可避と見られている。経産省優位の安倍政権ゆえに、東商取という縄張りが維持されている面もあるが、「このままでは商品先物市場自体が日本から消えてしまう」(JPX関係者)と嘆く向きも少なくない。