新潟市の地元スーパーが資金繰りに行き詰まり倒産した。2014年4月1日に8%に引き上げられた消費税率に対応可能な新型のレジに買い替えることができなくなったのが理由の一つ。
負債総額は4億4092万円。信用調査会社の東京商工リサーチによると、3月19日に新潟地裁に破産を申請、20日に決定されたものの、「消費増税がトドメを刺した、初の関連倒産」とみている。
設備投資は企業の経費、消費税の対象外だが…
新潟地裁から破産手続きの開始決定を受けたのは、スーパー「河治屋」。1955年に創業。本社のある巻店を皮切りに、新潟市内で多店舗展開を進め、ピークだった1991年には14億1400万円の売上高を計上した。
しかし、ここ数年は競合先の出店によって業績が悪化し、12年12月に巻店を閉鎖。また、約2年前から金融機関に対して借入金返済のリスケジュールで金利のみを返済していたほか、仕入先の一部には支払いを月2回に分けるなど協力を仰いでいた。
東京商工リサーチによると、「業況が好転しない中で電気料金の値上げに加えて、使用するレジが旧式なため4月以降の消費税率の変更に対応できず、新規の設備投資ができない状況に陥っていた」という。
13年3月期は2店舗体制とし売上高が約6億5000万円にまで落ち込み、また採算悪化から連続して赤字を計上し債務超過に転落。資金繰りに行き詰まった。破産手続きに伴い、従業員25人のほか、パート、アルバイトも全員解雇した。
スーパーに限らず、消費税率の引き上げに伴い設備投資を強いられる中小企業らは少なくない。レジや値札、自動販売機や券売機のシステム変更などがそれ。設備投資そのものは企業の経費であり、その際にかかった消費税は控除の対象になるとはいえ、準備には資金が必要になる。
河治屋の場合は以前からの業績不振で万策尽きており、レジを買い替える資金もなくなっていたようだ。
価格転嫁できなければ、赤字でも企業がかぶるしかない
中小企業にとって、消費増税は死活問題になりかねない。その理由は、増税分を商品やサービス価格に転嫁しにくいことにある。
増税前の2014年3月中旬に、産経新聞が金融を除く主要企業106社や中小・ベンチャー企業97社に実施したアンケート調査によると、増税分の価格転嫁について「まったく転嫁できない」と答えた中小・ベンチャー企業の割合は、主要企業の9倍に達した。
従業員300人以下の中小・ベンチャー企業では、価格転嫁が「まったくできない」と答えた企業が18%、「一部転嫁」が25%と、すべてを転嫁できない企業が4割を超えた。
消費税は「黒字課税」の法人税と違い、赤字企業でも容赦なく取り立てられる。価格に転嫁できなければ、企業側が消費税分をかぶらなければならなくなるわけ。しかも滞納すると、法定納期限から起算して最初の2か月間は現行年4.5%の日割計算、2か月を過ぎると年14.6%の日割計算という、消費者金融並みの延滞税(遅延利息)を取られてしまうという「酷税」だ。
日本の中小企業の70~80%が赤字経営か、赤字ギリギリとされる。資金繰りに苦しむ中小企業の「延命」を狙いに、金融機関に貸し付け条件の緩和努力を求めた中小企業金融円滑化法が終了して1年が過ぎたが、金融庁では当初、この円滑化法を利用した30万~40万社のうち5万~6万社に倒産リスクがあると試算していた。
この1年はアベノミクスによる景気回復の効果もあって乗り切ったが、3%の消費増税分を価格に転嫁できなかったり、売り上げを確保できなかったりする中小企業が増える可能性は小さくない。
17年前、消費税率が3%から5%に引き上げられた1997年の倒産件数は1万6464件。負債総額は14兆447億円。すべてが消費増税による倒産ではないが、前年から件数で1630件、負債総額で5兆9218億円と急増した(東京商工リサーチ調べ)。