就職説明会の参加などにあたって、企業が大学によって差をつける「学歴フィルター」が話題になっている。
企業は「学歴不問」をうたってはいるが、じつはこれが「建前」であることは少なくないようで、すでに「入口」の段階で学生を篩にかけているらしい。
企業が就活サイトに「ほしい大学」を指示する
就職活動のとき、多くの企業が「大学名は問わない」と明言している。ひと昔前、企業説明会に参加しようとしたら、一流大学とその他の私立大学とでは会場が別々に分かれていたことがあった。
それが今では、大学生がエントリーシートを提出する、「入口」の段階で篩にかけられている。企業説明会にも参加する「資格」が得られないのだ。どうやら、企業が大学によって学生を選別する採用方法は、昔も今もあまり変わってはいないらしい。
就活に詳しい大学ジャーナリストの石渡嶺司氏は、「企業のイメージダウンにつながることもあるので、あからさまに(大学名で)区別するようなことはありませんが、入口でシャットアウトすることはあります」という。
その方法は、企業が就職活動支援サイトを通じて学生のエントリーシートを受け付ける際、企業がサイト側に大学名を指定して「空席」にしたり「満席」にしたり、指示するのだそうだ。
元日本テレビ「NNNドキュメント」ディレクターで、法政大学の水島宏明教授はYahoo!ニュース(2014年3月30日付)で、「日頃、学生たちと話をするなかで、思い当たる節があった」と、学歴フィルターについて書いている。
企業説明会をネットで申し込もうとした学生から、「解禁されてすぐ申し込んだのに、あっという間に『満席』になっちゃって、けっきょく参加できなかった」と、打ち明けられていた。その学生は「学歴フィルター」によって、大学名だけではねられていたわけだ。
また、ダイヤモンド・オンライン(1月15日付)の「就活の都市伝説」では、ある女性が「MARCH(明治、青山学院、立教、中央、法政)以上のレベルの大学から受け付けるなどと決まりがあった」という企業の存在を明かしている。
一流大学でないと、採用した人材がハズれたときに言い訳できない
「学歴フィルター」が「差別にあたる」との声がないわけではないが、企業にも言い分はある。
インターネットを使った就職活動が定着。現状では、ひとりの学生が20~30社、なかには100社以上もエントリーシートを企業に送っている。当然、企業への応募者数は激増。そうなれば、企業のほうもすべての応募者のエントリーシートに目を通すことにも限界がある。つまり、企業は採用選考の手間を省くため、「学歴フィルター」を使わざるを得なくなったともいえるわけだ。
一方、企業が一流大学の学生を優先的に採用したい理由もある。いくら「人物本位」といっても、人事担当者としては、もしその人材がハズレだった場合、一定レベルより下の大学だと言い訳ができない。そのため、「結果的に、一流大学から採用すればいい、一流大学であれば安心ということになってしまう」と、前出の石渡嶺司氏はみている。
学生はどうなのか。エントリーシートを100社近く提出するような、無駄な就活をやめようとは思わないのだろうか――。かつて、企業は前年度に採用した出身大学や人数を開示していたが、最近はそういったデータはほとんどの企業が開示していない。それもあって、「自分の力量が判断できない学生が増えている」という。
石渡氏は、「一流大学の学生と他の学生ではそれまでの努力の仕方が違うし、力量が違います。それを認めようとしない学生が少なくありません。それは親にもいえ、授業料を払っているのだから、希望の企業に入れるようにするのが大学の役目といわんばかり。そうなると、大学もエントリーシートくらい出してみれば、ということになりますから、人気企業に偏るんです」と、大学の「就職予備校化」を懸念している。