一流大学でないと、採用した人材がハズれたときに言い訳できない
「学歴フィルター」が「差別にあたる」との声がないわけではないが、企業にも言い分はある。
インターネットを使った就職活動が定着。現状では、ひとりの学生が20~30社、なかには100社以上もエントリーシートを企業に送っている。当然、企業への応募者数は激増。そうなれば、企業のほうもすべての応募者のエントリーシートに目を通すことにも限界がある。つまり、企業は採用選考の手間を省くため、「学歴フィルター」を使わざるを得なくなったともいえるわけだ。
一方、企業が一流大学の学生を優先的に採用したい理由もある。いくら「人物本位」といっても、人事担当者としては、もしその人材がハズレだった場合、一定レベルより下の大学だと言い訳ができない。そのため、「結果的に、一流大学から採用すればいい、一流大学であれば安心ということになってしまう」と、前出の石渡嶺司氏はみている。
学生はどうなのか。エントリーシートを100社近く提出するような、無駄な就活をやめようとは思わないのだろうか――。かつて、企業は前年度に採用した出身大学や人数を開示していたが、最近はそういったデータはほとんどの企業が開示していない。それもあって、「自分の力量が判断できない学生が増えている」という。
石渡氏は、「一流大学の学生と他の学生ではそれまでの努力の仕方が違うし、力量が違います。それを認めようとしない学生が少なくありません。それは親にもいえ、授業料を払っているのだから、希望の企業に入れるようにするのが大学の役目といわんばかり。そうなると、大学もエントリーシートくらい出してみれば、ということになりますから、人気企業に偏るんです」と、大学の「就職予備校化」を懸念している。