全中は「譲歩」に抵抗
もし日豪EPAが妥結し、豪州産牛肉の関税が引き下げられれば、豪州産は米国産より優位に立つ。しかも、TPP交渉で米国が関税全廃を求めているのに対し、豪州は全廃まで求めず、引き下げ要求にとどめている。日豪EPA交渉を進め、米国の焦りを誘い、譲歩させようとの狙いが日本側にはあるのだ。
一方、豪州は日豪EPA妥結で、牛肉で最大のライバルである米国より優位に立ち、輸出を拡大したい。いまや日豪EPAは、アボット豪首相が「絶対的な優先課題」と語るほどなのだ。
かくて、日豪両国の思惑は一致している。ただ、最終的に妥結できるかはまだ見通せない。全国農業協同組合中央会の万歳章会長が林農相に、日豪EPA交渉の関税協議で譲歩しないよう改めて求めるなど、農産品関税の扱いには依然、関税引き下げへの抵抗感が根強い。「結局、最終的には安倍晋三首相が決断するしかない」(通商関係者)との声も高まっており、首脳会談に向けて、首相の判断に注目が集まっている。