慰安婦の強制性を認めた河野談話の見直しを求めて、日本維新の会の国会議員らが始めた署名が10万人を突破したと、議員側が明らかにした。一部世論調査でも、見直しに賛成の声が多くなっており、今後の政府対応が注目されそうだ。
維新の会「歴史問題検証プロジェクト・チーム」(座長・中山成彬元文科相)を中心に議員らは当初、1993年の談話発表当時の官房長官だった河野洋平氏らを国会で証人喚問することを求めようと動いていた。そして、2014年1月下旬には、署名を集めて、国会法に基づく請願をする方向になった。
「日本政府の事なかれ外交の責任」
しかし、プロジェクト・チームの事務局長をしている杉田水脈(みお)衆院議員の事務所などによると、自民党が、証人喚問は犯罪に関わった者ぐらいしか前例がないとして、この案に難色を示した。また、公式な署名だと、FAXやネットを通じてできないうえ、時間がかかり過ぎることもネックになった。
そこで、党内で協議したところ、問題の入口段階になる談話見直しを求める署名活動を非公式な形で行うことで落ち着いた。
維新の会では2月21日、中山成彬衆院議員が中心になって国民運動を始めたと公式サイトで明らかにし、署名がスタートした。国会では、当時の関係者の証言で、元慰安婦の聞き取りに当たって裏付け調査をしていないなどの問題点が浮き彫りになっており、署名用紙では、「『慰安婦問題』が世界的な問題となったのは、これまでの日本政府の事なかれ外交の責任」だと指摘している。
3月末までの署名活動の成果は、杉田議員サイトで4月1日に明らかにされ、国会議員団本部と中山、杉田両議員に集まった分だけで、目標だった10万人を達成したとした。
杉田議員の事務所によると、このほかの議員にも署名が集まっており、来週中にも集まった数を正式発表する。非公式な署名のため、国会質問などの場で、世論の強さを示すものとして活用したいとしている。
関係者「安倍首相はいずれ見直すはず」
ただ、政府は2014年4月1日、河野談話について、作成過程の検証は必要だとしながらも、見直しはせず、新たな談話も考えていないとの国会答弁書を閣議決定している。
このことについて、杉田水脈議員の事務所では、「後ろ向きの決定になりましたが、検証はするとしており、少しは動いたと思っています。見直しまでには時間がかかると思いますが、地道に活動を続けていきたい」と言っている。
検証の結果次第で、安倍晋三首相が談話見直しなどに動くことはあるのだろうか。
ある政界関係者は、安倍首相自身は見直すべきだと思っており、検証の結果が出れば動くはずだと指摘する。
「安倍さんは、『戦後レジームからの脱却』を求めており、歪んだ歴史認識を正したいと思っています。しかし、外交問題で支持率が落ちるなどして失脚してしまえば、それもできなくなってしまいます。ですから、安倍さんは、一時的に問題を鎮めるしかないと考えて、決定したわけです。とはいえ、全面屈服したとみなされれば立ち消えになってしまいます。安倍さんの側近などが見直しなどの必要を唱えているのは、外野に言わせておくためですよ」
安倍首相は、任期中にやりたいと考えているはずだとし、動く時期としては、自民党総裁選や次期衆院選の前が考えられるという。
産経新聞とフジテレビ系ニュース「FNN」が2月22、23日に行った合同世論調査では、河野談話の見直しに約6割もが賛成している。まだ、ほかには調査結果が出ておらずはっきりしていないが、安倍首相が、世論の動向を見ながら、見直しなどに向け舵を切ることもないとは言えないようだ。