西アフリカのギニアで発生した「エボラ出血熱」は、感染が疑われる患者数が111人にまで増え、少なくとも70人が死亡した。
エボラ出血熱は致死率が50~90%と極めて高い感染症で、確実な治療法が確立されていない。高熱や下痢、消化管からの出血などが特徴で、感染者の体液などに触れると感染するという。
「鳥インフルのようには拡大しない」が、致死率は50~90%
エボラ出血熱は1976年6月にスーダンで発見され、このときは284人が感染し、151人が死亡。その後も、東部や中部アフリカの熱帯雨林地域でたびたび感染が報告されてきた。最近では、2012年にウガンダで流行。このときは24人が感染し、うち17人が死亡。西アフリカで、人間への感染拡大が確認されるのは今回が初めてという。
今回の発症のきっかけは、2014年2月上旬にギニアで下痢や嘔吐、出血を伴う症状を抱えた患者が確認された。当初、現地では新型ウイルスの可能性も懸念されていたが、ギニア国内では分析できないため、病理サンプルをフランスのパスツール研究所へ送ったところエボラウイルスと確認された。
AFP通信によると、ギニア保健省は3月28日、コナクリで8人が感染。このうち1人が死亡したことを明らかにした。感染が疑われる患者の総計は111人で、うち70人が死亡。感染者の多数発生地域はリベリアやシエラレオネとの国境地帯で、これまでにリベリアでも8人の感染が疑われ、うち6人が死亡。シエラレオネでは6人に感染の疑いがあり、うち5人が死亡と、拡大している。
そうしたなか、流行の兆しがあるエボラ出血熱について、外務省医務官の経験のある、関西福祉大学の勝田吉彰教授は「感染の広がりは、さほど気にする必要はありません」と指摘。「アフリカでは、人も薬物も病原体も、出入国管理も税関も検疫も関係なく自由に移動するのだから、A国、B国、C国と国が増えること自体にそれほどの意味はない」という。
勝田教授が医務官としてスーダン在職中には、同国南部で、その後もコンゴ民主共和国でエボラ出血熱が発生したが、このときも広がりそうで広がらなかった。エボラ出血熱の場合、感染後の致死率が高く、また感染後亡くなるまでが短期間で、患者の行動範囲が狭いため、「鳥インフルエンザ(広範囲に拡大する)のような感染の仕方はしません」と説明する。
まして、海を越えて日本に「上陸」する恐れは高くないという。
流行食い止める方法は
とはいえ、エボラ出血熱が「海を越えない」とは言い切れない。実際にカナダでは、西アフリカからの帰国したカナダ人男性がエボラ出血熱を発症した疑いで入院した。報道では当初、「深刻な状況」と伝えられたこともあり、ちょっとした「エボラパニック」の様相だった。
しかし検査の結果、この男性は「エボラウイルスの感染なし」と判断された。前出の関西福祉大学の勝田吉彰教授は、「国名が2つも3つも登場して、しかも『大流行』などと取り上げられると、それだけで相当大変な事態になっているように受け取ります。正しい情報がうまく伝わらず、パニックに陥ることのほうが危険ですから、できる限り情報を素早く発信していくことが大事なのです」と話している。
もちろん、アフリカへの渡航者は感染しないよう十分に気をつける必要はある。ただ、感染の拡大は基本的には最初の段階で原因が見逃されていたために起る。たとえ海を越えて日本に上陸したとしても、「入国後、疑いがあればすぐに強制入院させることを徹底すれば抑えられます」と話している。