2014年3月26日、フィギュアスケート世界選手権の男子ショートプログラムがさいたまスーパーアリーナで行われた。超満員となった会場で一際目立っていたのが、「ユヅリスト」と呼ばれる羽生結弦選手(19)のファンたちだ。
黄色い声が飛び交い、演技直前まで叫び続けるファンもいた。だが、テレビで演技を見守っていた人たちからは、行き過ぎた応援を問題視する声も多々あがっている。
集中高める中で響いた「ゆづ、愛してるー!」
ソチ五輪で日本フィギュア男子初の金メダリストとなった羽生選手。五輪で巻き起こった「羽生フィーバー」はおさまることなく、この日も多くのファンが詰めかけた。1万8000席分のチケットはほぼ完売し、「ユヅリスト」を含むフィギュアファンは早朝から行列をつくった。
羽生選手の出番は32人中29番目だった。リンクにあがると女性ファンらの声と拍手が会場を包み、熱を帯びた。応援バナーの掲出抽選に当たったファンたちは、「ゆづ」「YUZU」などと書かれた思い思いの自作バナーを手に声援を送る。羽生選手が目を閉じながら気持ちを整える間も「がんばれー!」との声が止むことはない。そして、いよいよ演技が始まろうという瞬間、一部ファンの声が響いた。
「ゆづ、愛してるー!」
熱烈な求愛とともに始まってしまったショートプログラムで、羽生選手は冒頭の4回転トゥーループで転倒。その後は華麗な滑りをみせるも、演技終了後には悔しさからか苦笑いを浮かべた。羽生選手が客席に「ありがとうございました」と笑顔でこたえる中、一心に見守っていたファンは階段を駆け降り、続々と前列の方に集まった。その盛り上がりは同じく出場していた小塚崇彦選手、町田樹選手の時と比べても際立っていた。解説者が話す中、近くを通った女性の興奮した声が拾われていたり、時折「キャー!」という甲高い声まで聞こえたりと、テレビ中継を見ているだけでもファンらの熱狂ぶりがうかがえた。