鉄道の駅構内やホームで営業する小規模の売店が近年、コンビニエンスストア型に姿を変えている。鉄道会社がコンビニ大手とタッグを組む例も増えてきた。
首都圏を走るJR東日本各線の駅では、長年親しまれてきた売店「キヨスク」が姿を消しつつある。
ローソン、ファミマ、セブンと提携する鉄道各社
通勤・通学の足として利用される首都圏の鉄道のうち、東京急行電鉄は2012年3月下旬から、ローソンと共同開発した「駅型売店」を従来店舗と入れ替える形で開業している。コンビニ大手であるローソンの知名度を生かしての集客を期待したようだ。同様に西武鉄道はファミリーマートと提携し、新型の店舗を展開。また京浜急行電鉄は、セブン―イレブンを駅の売店として出店している。
関西でも2014年3月27日、JR西日本とセブン―イレブン・ジャパンの業務提携が発表された。JR西管内の1222駅にある売店およそ500店舗を、今後5年間かけて「コンビニ型」の新店舗に置き換えていく。2014年6月上旬には、京都駅や博多駅などで5店舗をオープンするという。
都心のJR東日本管内の駅では、「キヨスク」の店舗数が年々減少している。事業主のJR東日本リテールネットによると、コンビニ型店舗の「NEWDAYS」とキヨスクを合わせた数は、2010年の931店から11年には900店、12年に885店と「右肩下がり」だ。同社のウェブサイトには、NEWDAYSについて「500店舗体制に向けてより多くの駅への出店」を目指し、取り組んでいると書かれている。閉鎖の対象はキヨスクのようだ。
JR東日本リテールネットに聞くと、やはりキヨスクを減らしていると話す。「すぐそばに別のキヨスクやNEWDAYSが営業している場合は統合し、効率化を図っています。キヨスクからNEWDAYSへの切り替えもあります」と説明する。駅が長期間にわたって大規模な改装工事を実施する場合に閉店せざるを得ないケースもあるそうだ。
JR総武・中央線の市ケ谷、四ツ谷の両駅を歩いてみた。いずれもかつてはキヨスクがホーム、駅構内で複数営業していたようだが、今では一部が閉鎖されている。
かつてのキヨスクが「自販機コーナー」と化す
市ケ谷駅の場合、改札を入る手前にキヨスクとNEWDAYSが向い合わせの場所にある。ホームに入ると、かつてはキヨスクが置かれていたようだが、現在は無人の「オートキヨスク」に姿を変えていた。飲料やスナック菓子、新聞の「自動販売機コーナー」と化している。
四ツ谷駅も事情はほぼ同じだ。総武線側のホームにオートキヨスクがあるものの、店員のサービスを受けられる店は見当たらない。ただ、いったん改札を出ると、駅構内に1店舗ずつキヨスクとNEWSDAYが営業していた。
品ぞろえや商品管理といった点から考えると、コンビニ型の売店が増えていっても利用者にとっては不便を感じないだろう。ただ、狭いスペースに新聞、雑誌から飲食物、マスク、雨傘にネクタイまでそろう「何でも屋」の雰囲気や、通勤ラッシュ時に殺到する客を鮮やかにさばく店員と、キヨスクの特徴に愛着を持つ人はある種の寂しさを感じるようだ。「全ての商品の値段を暗記し一瞬で暗算するキヨスク店員さんはどうなるんだろう」といった声が、ツイッターには寄せられている。