NHKが放送しているバラエティ番組に、日本維新の会の中田宏衆院議員がクレームをつけた。
2014年3月25日の衆院総務委員会で発言したもので、「ケータイ大喜利」など3番組について、「NHKでやる必要があるのか」と厳しく追及した。中田議員が名指しした番組は、それほど目に余る内容なのだろうか。
「公共放送としての自覚が疑われる」と批判
中田議員は質問の冒頭で「NHKの番組が、一言でいうと低俗になっていないか」と指摘した。「『なんだこりゃ』と思うような娯楽番組がいくつも並んでいる」と問題視し、「着信御礼!ケータイ大喜利」「コントの劇場」「七人のコント侍」の3番組を例に出した。
中田議員はスポンサー収入に頼る民放と異なり、視聴率を稼ぐ必要のないNHKに「何のためにこういう(低俗なバラエティ)番組をやっているのか」と疑問を投げかけ、「国民から受信料を徴収している公共放送としての自覚が疑われる。あまりにも民法のまねをしすぎではないか」と非難した。さらに、「私が低俗と勝手に決めつけられるものではないが、ドタバタ暴れて人の頭を叩いて笑いを取るようなものではなく、地域性や日本の歴史や文化をひもとき、若い人が関心を持てるような番組にしてほしい」などと、注文をつけた。
こうした主張に、新藤義孝総務相は「中田議員が言っていることも国民の意見であり、そういうものを見たいという意見もある」とした上で、「NHKは公衆の要望を満たす、文化水準の向上に努めるという意味で、よい番組を提供していただきたい」と回答した。NHKの籾井勝人会長は「大変参考にさせていただき、今後のNHKの娯楽番組のあり方を、いろいろ研究させていただきたい」と答えた。
中田議員がこき下ろした3番組はいったいどのようなものなのか。質問中には、「(これらの番組を)どう思うかと何人かに聞いてみると、『いや、NHKがわざわざやるような番組じゃないですよね』との答えをもらった」とも語り、個人的な意見ではないことを強調していた。
インターネット上でも以前から好意的なコメントが多い
一番に挙がった「ケータイ大喜利」は、生放送中に出題される大喜利形式のお題に視聴者が携帯電話から回答を投稿する、視聴者参加型のバラエティ番組だ。司会を今田耕司さん、投稿紹介を千原ジュニアさん、審査委員長を板尾創路さんが務める。投稿作品を紹介しながら進行するシンプルな内容だが、大喜利自体は長寿バラエティ番組「笑点」(日本テレビ)でもおなじみで、ラジオ番組の投稿企画の定番でもあり、幅広い年代が親しみやすいものだ。実際、2005年から続き、インターネット上でも以前から好意的なコメントが多い。なお、放送は土曜(第1~第3)の深夜で、同じ深夜枠の番組の中では他局と比べても比較的「地味」なものといえる。
三宅裕司さんが一流俳優陣と組み、一夜限りのコントを披露する「コントの劇場」(毎月最終金曜放送)、旬の話題を盛り込んだコントを人気芸人らが演じる「七人のコント侍」(金曜放送)も、ネット上では好評だ。特に「コントの劇場」は公開収録している番組で、手のこんだ本格的なコント番組として定評がある。中田議員が問題視するような「ドタバタ暴れて人の頭を叩いて笑いを取る」だけの内容とは言いがたい。また、両番組はBSプレミアムで放送されているもので、NHK総合では、同じ22時からの時間帯にスポーツニュース番組「サタデースポーツ」を放送している。
ロンブー淳「テレビをよく知りもしない議員が…」
インターネット上には中田議員と意見を異にする人も多い。著名人も反論していて、お笑いコンビ「ロンドンブーツ1号2号」の田村淳さんは26日、「テレビをよく知りもしない議員がNHKで、低俗な番組を流すなだとさ…」とツイッターでコメントし、「NHKの幅の広いテレビプログラムは他の局が真似できない内容のもので、視聴者の気持ちを汲み取って、新しいNHKに変わろうとしてると僕は感じるけど…」などと主張。「高尚なバラエティばかりだと、また昔のNHKに戻ってしまう…どうかそんなことになりませんよーに」と訴える。
音楽ユニット「東京プリン」の伊藤洋介さんも「明らかに的外れな見解だ」とツイート。コラムニストの松野大介さんも「槍玉に挙げた3つはちゃんとしたエンターテイメントでしょ。公共放送じゃないが低俗なのは民放に見られる。維新の代表のやり口、言動のほうが低俗」と中田議員を批判している。