北朝鮮に拉致された横田めぐみさん=拉致当時13=の父、滋さん(81)と母、早紀江さん(78)が2014年3月24日、東京・有楽町の日本外国特派員協会で会見し、孫のキム・ウンギョンさん(26)との対面を果たしたモンゴル訪問の内容を説明した。
ウンギョンさんはチャーター機でモンゴルを訪問し、モンゴルでは貴重品だとされる野菜を持参して横田さん夫妻にふるまった。ウンギョンさんは北朝鮮で最難関だとされる金日成総合大学を卒業し、面会の際も「顔色もつやもよかった」という。夫についても、「真面目でやさしい感じの男性で、小柄な人」などと明かした。一家の暮らしぶりは多少、明らかになったようだが、政治に関する話題を避けたこともあって、めぐみさんの生存に関連する情報は全く得ることが出来なかったという。
チャーター機に野菜を積んで横田夫妻にふるまう
横田さん夫妻とウンギョンさん一家は14年3月10~14日にかけてモンゴルの首都、ウランバートルにあるホテルのような施設で面会した。3階に横田夫妻、4階にウンギョンさん一家が滞在し、両家族は主に2階の食堂で面会したという。
ウンギョンさんには、生後10か月になる娘と夫が同行。北朝鮮側の通訳と日本の外務省の職員が両家族の世話をした。滋さんは、
「(北朝鮮のモンゴル訪問団の)一番上の人とは、接触はまったくしていない。特に先方はチャーター機に乗って来ているので、偉い人が乗っているとは思っているが、そういった方とは接触はなかった」
と説明しており、北朝鮮側との接触は限られていたようだ。
ウンギョンさん一家の様子については、
「健康的で元気で、顔の色もよくて…。赤ちゃんは、めぐみもそうでしたが、本当に太っていて、10か月と言っていたが11キロもあって信じられなかった」(早紀江さん)
「飛行機で(モンゴルでは高級品だとされる)野菜を積んできて、自分で調理をして、そして我々に食べさせてくれた。政治的なことはなかったが、本当にきめ細かく接待してくれた」(滋さん)
と目を細めた。ウンギョンさんの夫は、ウンギョンさんと同じ金日成総合大学のコンピューター学科の出身。横田夫妻は
「仕事の内容は言わなかったが、自宅から歩いて10分ぐらいのところに勤めていると言っていた」(滋さん)
「真面目でやさしい感じの男性で、小柄な人。とても仲がよくて、赤ちゃんも大事にして、むずかるとすぐにだっこして…」(早紀江さん)
などと説明した。
北朝鮮には「何でもあります。ないものはありません」
北朝鮮での暮らしぶりについては、微妙な会話もあったようだ。ウンギョンさんは北朝鮮の物資の豊かさについて「何でもあります。ないものはありません」と話したのに対して、早紀江さんは、
「顔色もつやもよくて、元気に明るく、屈託のない感じで生活をしているんだということを目の当たりにして本当に私たちは嬉しく思っています」
と応じた。その上で拉致被害者を念頭に、
「沢山日本に帰っていない人もいるので、そういう人たちも含めて、あなた方ぐらいのレベルで満ち足りた生活ができていれば、私たちはどんなに嬉しいかと思う」
と続けたが、「そういった話になるとデリケートな感じになる」ため、それ以上は深入りできなかったという。
拉致被害者のめぐみさんについては、ウンギョンさんから
「お母さんは歯が弱く、いつも歯医者に通っていた」
といったエピソードが明かされたものの、
「生死の問題は非常にこちらからは出しにくいし、向こう側も、(北朝鮮当局から)教えられたように(死亡したと)思っている」(早紀江さん)
として深くは踏み込まず、生存に関する新たな情報は得られなかった。