年間12日のコンサートが高くつく
そもそも7万人収容の日産スタジアム(横浜市)でも600億円程度でできており、8万人という収容人員に比べて建設費がかさむことに、市民団体や建築家などが反発しているが、そこには、五輪後の収支もからむ。
JSCは五輪後の利用計画について、年間収入45億5500万円、支出41億4800万円と弾く。収入の内訳は、会員シート・迎賓9億600万円、興行事業(スポーツ・コンサートなど48日)9億6200万円、コンベンション事業4億7400万円、フィットネス事業1億3500万円、物販・飲食事業1億5400万円、その他8000万円。特に焦点になるのが興行収入のコンサートで、芝を傷めないよう日数を制限するものの、年間12日は可能とする。コンサートは雨でも開催できる必要があるとして計画に盛り込まれたのが開閉式屋根だ。その整備に、初期費用だけで139億円必要というように、「無駄が多い」(市民団体)という批判が絶えず、自民党無駄撲滅プロジェクトチームなども問題点を指摘しており、現計画のままでは都もおいそれと国のいい値を飲めないのだ。
大会開催の基本計画は来年2月に国際オリンピック委員会(IOC)に提出しなければならず、そこに新国立競技場を含む施設の詳細な整備計画を盛り込む必要がある。2019年秋に日本で開催されるラグビーのワールドカップに間に合わせるため、2015年10月には着工することになっており、時間的な猶予は多くない。
ただ、都知事交代で風向きの変化を指摘する声もある。猪瀬知事時代の周辺整備負担の文科相との合意に、昨年12月、都議会自民党が「知事の独断」と反発する場面があったが、自民党が全面的にバックアップして舛添知事が誕生、「猪瀬氏がやることは全て悪という都議会の空気も変わり、舛添知事も国と慎重にすり合わせするはずで、500億円満額かは別にして、相応の負担で妥協するのでは」(都議会野党関係者)との観測も出ている。