描いてきた将来像崩れて、「割を食った」
「東大法」の進路をみると、やはり多くは大学院(173人)に進んでいる。警察庁(8人)や財務省(7人)、日本銀行(6人)、厚生労働省(5人)と省庁にまじり、三菱商事(9人)や三菱東京UFJ銀行(8人)、東日本旅客鉄道(5人)、日本生命(4人)といった「超一流」といわれる企業にも進んでいる(2011年、大学通信調べ)。
ただ、なかには早々に就職をあきらめて、とりあえず大学院に進学する「院逃げ」もいるとされる。
一方、受け入れる企業側も「東大法」を、諸手を挙げて歓迎しているわけではないようだ。前出の石渡嶺司氏は、「難関を突破しようと受験勉強に追われ、入学してからも司法試験などを目指して勉強に明け暮れ、社会との接点をもってこなかった。その弊害は大きいです」と指摘する。
「東大法」なのだから、勉強ができて、頭がいいことはわかっている。しかし、「企業は組織ですから、ほかの社員と協力してやっていってもらいたい。しかし面接などで、『いっしょに働くことができないのではないか』と思わせる場面がいろいろとあるようです」と石渡氏。要はコミュニケーション能力の欠如ということらしいが、「東大法」にしてみれば、法曹家やキャリア官僚といった将来像が崩れて、「割を食った」思いが強いのかもしれない。
ちなみに戦後、吉田茂や鳩山一郎、岸信介らが「東大法」を卒業して総理大臣に就いたが、最近では1991年の宮澤喜一元首相が最後。しかも、いずれも東京帝大法の卒業なので、新制の「東大法」出身の総理大臣は一人もいないことになる。