被災地に来て何かを感じ取ってほしい
決して興味本位ではなくても、被災地訪問が不謹慎ではないかと躊躇する人がいた。訪問者が釜石に来てからも「来てよかったのだろうか」と悩んでいると耳にした。岩崎さんは「『あの日』は私たちが背負っていく。若い人たちはここで何かを感じ取って、未来を築く糧にしてほしい」と声をかけた。話だけでなく、震災の記録を冊子にまとめて配布し、DVDまで製作した。
一方では、豊かな自然に囲まれた故郷を多くの人に訪れてもらい、素晴らしさをアピールしたい思いもある。「津波が尊い大勢の命を奪い、いまも行方不明者がいる。それは分かっています」と話してから少しの沈黙。やがて、こう口にした。
「でもこの土地は、悲しみばかりじゃない。地域の皆さんと一緒に、私たちなりにふるさとを再建していくうえで、今はその途中です。人は前を向いていないと生きていけないでしょ」