「チーム・バチスタの栄光」などの小説で知られる医師で作家の海堂尊さんが自身の公式サイトで、書店員による投票で選ばれる文学賞「本屋大賞」を痛烈に批判した。
発言をめぐりネットで賛否両論の議論が盛り上がっている。
「本来なら平台に置かれるべき本がのりそびれた」
出版市場が縮小傾向にある中で本屋大賞は、書店から「売れる本」をつくるのを目的として2004年に始まった。選考委員に作家や編集者が入らず、お客に近い立場にいる書店員が「面白かった」「自分の店で売りたい」と思った本に投票するので、埋もれている良作や地味だがおもしろい本に光を当てられるのが特徴だった。近年は受賞作品の傾向が変わり、元から売れているものが受賞するという声もある。2013年は百田尚樹さんの『海賊とよばれた男』が大賞に選ばれた。
2014年4月の本屋大賞の結果発表を控え、小説家の海堂さんは2月24日、公式サイトを更新して「本屋大賞は書籍の売り上げ低下傾向に拍車を掛ける」と苦言を呈した。「本屋さんが一番売りたい本」として選ばれた作品の宣伝に書店が力を入れて百万部も売れる一方で、「本来なら平台に置かれるべき本がのりそびれた」と指摘した。たとえば、2013年に投票で2位になった横山秀夫さんの小説『64』は大賞との点差がわずかなのに、本屋大賞が終了した翌月にはほぼ平台から姿を消していたそうだ。
「出版業界というものは本来、植林していかなければ滅びてしまうのに、本屋大賞は伐採商法なのです」
そもそも「全国書店員が選んだいちばん!売りたい本」というキャッチコピーが、大賞作品以外の本は「そんなに売りたい本ではない」というメッセ―ジになってしまうと述べ、読者が「本屋大賞受賞作だけ読めばいい」と判断する可能性を示した。
また、大賞候補になると「書店員が選んだ作家は素晴らしい」と印象づけるために、その後の作品も大手書店チェーンで優遇されると主張した。書店展開や書店ツイッターで確認できるという。過去11年のデータを分析して作家別に列挙し、このうち候補になった回数の多い、伊坂幸太郎、小川洋子 三浦しをん、百田尚樹、有川浩、万城目学、森見登美彦の各氏を「本屋大賞・神7」と命名している。
ネットでは書店員などから反発する声
さらに海堂さんは、2014年の本屋大賞候補作を一切読まず、「文学的価値とまったく無関係」にメディア露出や書店員のツイッターだけで結果を予想し、
「これでもし私の予想が当たったら、本屋大賞は文学作品の素晴らしさというよりもむしろ『書店員の人気投票』という側面の方が大きい文学賞だと言っていいと思います」
と皮肉った。
これに対してネットでは書店員などから反発する声があがり、
「頼むからさ…。本屋大賞についてあれこれ的はずれな事を言うのはやめてほしい、いいかげん。たぶんわからないんだろうな、あの賞がいかに画期的なものなのか」
「書棚に立てておいてある本は、平台に置いてある本より軽視されているわけではなかろうよ? 本屋大賞もノミネートされていないからって軽んじられてはないと思う」
といったツイートが出た。
一方で海堂さんの意見に賛同する声も多く
「読者であるところの私としてはコピー云々はともかく最近の本屋大賞の候補作ってもう既に売れてる本じゃん!とは常々思ってました。もうその本紹介せんでもええやんと」
「正直ライト層を呼びこむだけの当たり障りない軽い本が並んでるだけで、この大賞の本を読んで、どっぷり本の虫になるって感じではないですよね」
という書き込みがされている。