日本新聞協会の調査で、「新聞を読んでいる人」が83.6%に達した一方で、電子版の利用割合は7.7%と1割に満たないことが判明した。
インターネット上では、有料版は購読料が高いとの意見が見られる。スマートフォン(スマホ)の普及で、アプリ経由で複数の無料ニュースへのアクセスが容易となり、高額料金を払ってでも読みたい読者が増えないのかもしれない。
「電子版のみ」だと購読料にお得感がない
2014年3月18日に発表された「2013年全国メディア接触・評価調査」の結果をみると、「有料・無料を問わず電子版の新聞を読んでいる人は7.7%」となっている。これだけでは、有料版の購読者の割合は分からない。
前回調査が行われた2011年は、ふたつを分けて統計を取っていた。「有料の『電子版の新聞』を利用している」は、わずか1.1%で、「無料の『電子版の新聞』を利用している」が11.7%だった。
さらに、「今後利用したい、登録・購読したい」と考えているのは、2011年は13.4%だったが今回は8.1%に減っている。電子版そのものの認知度は5割近くに達しているのに、人気は退潮傾向とすら言えそうだ。調査では、電子版の利用率が低い結果に関する詳しい分析がされていないため、原因は不明だ。ただツイッターを見ると、この結果を「新聞有料版は料金が高いから」と納得する声が複数見られた。
主要紙で電子版を有料化しているひとつが、日本経済新聞だ。紙版の購読者は、プラス1000円で有料電子版を読める。しかし電子版のみを購読したい場合は月額4000円だ。紙の朝刊と夕刊のセット料金が月額4383円なので、電子版だけの購読に大きなメリットがなさそうだ。さらに2014年4月以降は購読料が改定され、4200円と5%の値上げとなる。朝日新聞の場合、紙版購読者は日経と同じくプラス1000円、電子版のみを購読する場合は3800円となる。紙版だけだと月額3925円なので、電子版単体ではやはり「お得感」があまりない。
先行して電子版を有料化した米ウォールストリートジャーナルの場合、日経や朝日と似て、「電子版のみ」と「紙版のみ」の購読料に大きな差はない。だがニューヨークタイムズは、電子版の料金体系に複数の選択肢を持たせている。例えばあらゆる電子機器からアクセスするプランは1週間8.75ドルだが、使用ツールをパソコンとスマホのみに限定すると1週間3.75ドル、4週間15ドル(約1500円)で済む。紙版の購読者が電子版を申し込むと、プランにかかわらず追加料金は発生しない。
数行見せて「続きは有料版で」は腹が立つだけ
最近はニュースへのアクセスも、スマホやタブレット型端末が主流となってきた。複数のニュースアプリを入れているユーザーは少なくないだろう。中には、複数の新聞や雑誌の記事を効率よく拾ってきて閲覧可能にするものもある。
「日経電子版を解約した」との声もあった。「soutaros」と名乗る人物のブログに、4月から4200円に値上がりする日経有料版の契約を解除して、代わりに「NewsPicks」というサービスに乗り換えたという。これは月額1500円で、アプリ経由で週刊東洋経済や週刊ダイヤモンド、ダウジョーンズビジネスニュースなど、一部有料コンテンツを含む多媒体の経済情報が読み放題になる。フェイスブックやツイッターと連携、またフォローしている有識者の「おすすめ記事」が分かる仕組みだ。日経を解約しても、何の問題も発生していないと書いている。
読者の、記事へのアクセス方法が変化している影響を指摘するのは、ITジャーナリストの井上トシユキ氏。ツイッターで興味深い記事が流れてきた、ヤフーのトピックスで続きを読みたくなる見出しがあった、というのが最近はニュースへの「入口」となっているという。興味がわけば詳しい情報を探そうと検索するが、この時点では無料の情報はいくらでも転がっているというわけだ。あらかじめ有料版サービスに登録して、能動的にニュースを見つけに行くよりも、スマホをながめながら「面白い」と感じれば「元ネタ」を探すという受け身なスタイルになってきたと、井上氏は考える。
日経や朝日にも注文を付ける。両紙とも、紙版の記事の数行分をサイト上に公開して、「続きは有料版で」と誘導するパターンが多い。
「そんなことをしても、腹が立つだけ。例えば無料版では記事のきちんとしたサマリーを読ませて、そこに解説やグラフ、データを加えた『詳細版』を有料で見せるような配慮を、新聞社には見せてほしいですね」