男児死亡事件で注目、「ベビーシッター」紹介サイト なぜ母親たちは利用せざるをえないのか

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   埼玉県のマンションの一室でベビーシッターに預けられていた2歳の男児が遺体で見つかった事件で、神奈川県警は2014年3月18日、ベビーシッターの物袋勇治容疑者(26)を死体遺棄の疑いで逮捕した。物袋容疑者は容疑を否認しているという。

   事件の真相解明が待たれる中、男児の母親も利用していたベビーシッターの紹介・マッチングサイトが注目を集めている。「見ず知らずの人に預けるなんて」という批判も少なくないが、一定のリスクがあっても頼まざるを得ない母親たちの苦しい現状があるようだ。

1時間1000円前後で利用可能

男児の母親が利用したという「シッターズネット」は3月18日、一時サービス停止を発表した
男児の母親が利用したという「シッターズネット」は3月18日、一時サービス停止を発表した

   ベビーシッターのニーズは、近年の待機児童の問題もあり、高まっている。公益社団法人「全国保育サービス協会」の資格認定試験はあるが、国家資格が必要な保育士と違って特別な免許や資格は必要ない。また、児童福祉法では5人以下を預かる場合は届け出も不要とされていて、企業による派遣型サービスのほかに、個人のシッター業者も数多く存在する。

   個人シッターと利用者をつなぐのがインターネット上のマッチングサイトだ。今回、男児の母親が利用した「シッターズネット」は登録シッター約5000人、利用者約1万人の無料マッチングサイトだった。同様のサイトは大小含めるといくつも存在する。

   サービス内容は訪問保育が基本だが、幼稚園や保育園の送迎、産後の補助、夜間の宿泊など多岐にわたっている。利用時はサイト内の掲示板に場所や日時を書き込んでシッターを募るか、条件に合う登録シッターを検索してメッセージを送って交渉を進める。紹介料を取るところもあるが、登録シッターと直接やりとりするため、比較的低価格なところが多い。あるサイトでは「派遣型サービスの平均料金が2000円前後に対し、1000円前後が相場」(1時間当たり)と説明している。料金面だけでなく、急な依頼や夜の依頼に対応してもらいやすい点も重宝されているようだ。

シッターとの事前面談は難しい?

   だが、マッチングサイトでのシッター利用は一定のリスクも存在する。個人シッターの質はバラバラで、育児未経験者もいる。サイトには詳細な個人情報は書かれていないため、今回のように名字と連絡先しか知らないまま預けてしまうケースもあり得る。あるサイトでは「子供を預ける際には事前にシッターと面談するよう注意喚起している」と説明しているが、シッターを頼むほど忙しい親にとって事前面談がどこまで徹底されているかは不明だ。

   ネット上では今回の事件を受け、「仲介しかしない謎のサイトで見つけた人に…なんておかしい」「何故そんなリスク背負ってまで預けようと思ったのかまず理解できない」「親も親だよね」などといった意見が相次いでいる。だが、「どうしても利用せざるを得ない人もいるのも現実」「近所の人や親類に預けられなかったのか、との声もあるけれど…それができない子育て世帯はいっぱいいる」との意見があるように、頼らざるを得ない状況にある親が少なくないのも事実だ。「うまく利用していた働くお母さんが困るような状況になったら、それはそれで気の毒」と、今回の事件の過度な影響を懸念する声もある。

専門家「預けざるを得ない方もいる」

   病児保育のNPO法人「フローレンス」代表理事の駒崎弘樹氏もツイッターで「やむにやまれず、預けざるを得ない方もいるのです。様々な子育て環境にある方がいることに、想像力を働かせて頂けると幸いです」と、苦しい状況に置かれた親たちへの理解を求める。

   また、「今回の個人シッターマッチングサイト事件で構造的に重要なのは、なぜ人は個人シッターマッチングサイトを、高リスクにも関わらず、使うのか、という点。それはシッター会社を通すより安いから。なぜ安いか。品質管理コストが掛かってないからだ」と指摘。「政府はこれまでベビーシッターに対し、ニーズが増加しているにも関わらず、ほとんど補助してこなかった。それが個人間私的契約市場を生み出すことに繋がったといえる。待機児童問題だけでなく、多様な保育を支えるためにも、社会的投資が必要だ」と語った。

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