消息が分からないままのマレーシア航空370便(MH370)の捜索が、新たな段階を迎えつつある。これまでは南シナ海を対象に捜索を続けてきたが、今後は「タイ北部からカザフスタン-トルクメニスタンの国境にかけて」「インドネシアからインド洋南部にかけて」の2つの広大なエリアで捜索を進めることになった。
とりわけ重要な進展は、ナジブ・ラザク首相が、MH370の地上との通信が途切れたことについて「飛行機に乗った誰かが意図的に行ったと考えると矛盾がない」と述べたことだ。通信機器の電源を切るには専門の知識が必要で、捜査の焦点は、操縦士やMH370に乗っていた技術者に移りつつある。
消息を絶った後西側に旋回していた
MH370は2014年3月8日0時40分(現地時間)、乗員乗客239人を乗せてクアラルンプール空港を北京に向けて出発。約50分後の1時30分頃南シナ海上でレーダーから姿を消した。その後マレーシア軍がレーダーの記録を解析したところ、MH370はマレー半島西岸を飛行していたことが明らかになった。消息を絶った後、MH370は大きく西側に旋回していたことになる。
航空機には自機の位置や機種などを発信する「トランスポンダー」「エーカース(ACARS)」といった装置が搭載されている。行方不明から1週間が経過した3月15日の会見では、これらの装置が「意図的に切断された」ことが明らかにされた。ACARSには、簡単に操作できるスイッチのようなものはついておらず、電源を切るはかなりの専門知識が必要だ。
3月16日の会見では、ACARSが切れた後に操縦室と地上とで無線交信が行われていたことも明らかになった。飛行機からの最後の言葉は「了解、おやすみなさい(All right, good night)」だったという。何者かが通信機器を切った後も、機長らが平静を装っていた可能性がある。
警察が機長と副操縦士の自宅を捜索
自動的に行われていた衛星経由の通信は切断されておらず、信号は8時11分まで受信できていたという。消息を絶ってから7時間近く飛び続けていたことになり、捜索対象エリアが大幅に広がることになった。これまでマレーシア政府は14か国に捜索協力を依頼していたが、現時点では25か国に増えている。
3月15日には、警察が機長と副操縦士の自宅を捜索。それ以外にも、乗客、技術者、地上係員の動向についても捜査の対象になっているという。ロイター通信によると、警察当局はMH370に搭乗していたマレーシア人の航空技術者(29)も捜査の対象にしている。この技術者はプライベートジェットを運航する会社に勤務しているとされ、専門知識が悪用された可能性を視野に入れて捜査を進めている。