「子供に夢を託すな、大人も自分を生きろ…」
子供が大人に向かってこう歌いかけるCMが、最近ネット上で頻繁に流れている。動画やニュースをネットでチェックする際、耳にしたことがあるという人も多いのではないだろうか。
このCM、歌いかけられている側の大人たちからはあまりよく思われていないようだ。
「先が見えてるだなんてうそうそ」
話題のCMは、リクルートキャリアが運営する転職・求人情報サイト「リクナビNEXT」のものだ。2013年9月に公開され、主にYouTubeなどウェブサイト上の広告で放映されている。
スーツ姿のサラリーマンが急ぎ足で通り過ぎる駅前や、疲れたサラリーマンが大口を開けて眠りこける電車内で、また立ちそびえる高層ビルに向かって、子供たちが「子供に夢を託すな、子供に夢を託すな」「先が見えてるだなんてうそうそ」「大人も自分を生きろ」などと淡々と歌い上げている。「自分のやりたいことは自分で実現しよう」ということを訴えたいCMだと思われる。
常見陽平氏「この幻想が日本人を苦しめているのでは」
このCMが14年3月からネット上で多く出稿され、話題になっているのは確かだが、評判の方は今一つ芳しくない。
ネット上に書き込まれた感想を見てみると、「見ててなんか気持ち悪い」「世の中の転職出来ない状態の人間全員にケンカ売ってる」「お前等こそ子供ダシに使うんじゃねぇよ」など、辛らつな意見が並んでいる。
元リクルート社員で人材コンサルタントの常見陽平氏も13年10月、言論サイト「アゴラ」に寄稿した文で「『気持ち悪い』と感じた」と率直に述べ、「この『もっと素敵な居場所がある』幻想、『自分らしく働けるはず』幻想が日本人を苦しめているのではないか。自分探しが止まらなくなっているのではないか」と指摘していた。
一方で「これは正論」「知人で子供がいる親の連中全員に正座して聞かせたい」など、内容を評価する声もあった。