朝日新聞の朝刊1面コラム「天声人語」がNHKの人気ドラマ「あまちゃん」を取り上げた。
その中の一場面で登場した「ダサい」というせりふと、東京電力福島第1原発が建設されたことには通底するものがあると論じようとしたようなのだが、「書いてあることの意味が分からない」として、ちょっとした話題になっている。
「ダサいくらいなんだよ、我慢しろよ!」
2014年3月12日の天声人語で取り上げられた、「あまちゃん」の主人公アキの親友ユイが、アイドルへの夢を「ダサい」として諦めようとしたのに対して、アキが「ダサいくらいなんだよ、我慢しろよ!」と一喝する場面。あまちゃんの音楽を担当した大友良英さんは、この場面に大きな衝撃を受けたといい、著書で
「ダサいという言葉に囚(とら)われる心と、福島に原発がつくられた<土壌>は一致している」
などとつづったという。これを天声人語の筆者は
「そこに共通するのは都会へのひけめ、あこがれ、そして対抗心も、だろうか。だからこそ、大友さんはアキの言葉にはっとし、<地方と中央の関係を根底からくつがえす原動力>を見たのかもしれない」
と解説。その上で、約620字のコラムを
「ドラマの中のアキは東京生まれの設定だが、ずっと方言のままだった。東京発の価値観だけにしたがって生きる必要などないのだ」
と締めくくった。
「中の人」は2人いる
この日の天声人語は、朝日新聞のウェブサイトでは「ダサいくらいなんだよ!」という見出しがついていたが、掲示板では
「あまちゃんの『ダサい』という言葉に衝撃 福島原発が作られた土壌と一致している」
といった見出しになって拡散された。書き込みは、コラムの内容が理解不能だとの声が多数だ。
「発想が飛躍しすぎて意味がわからない」
「俺には解読できなかった」
「何言ってるのかさっぱりわからないけど 反原発言いたいことだけわかる」
ただし、朝日新聞のウェブサイトの記事を読んでツイートされた内容は若干方向性が違い、
「また最近、朝日新聞が得意な若者語り、尾崎豊トークかと思ったら、そうでもなかった」(人材コンサルタント・常見陽平氏)
といった理解を示す声もある。
天声人語に筆者の署名はないが、「中の人」は2人いることが公表されている。07年4月から担当している社会部出身の福島申二論説委員と、13年4月から担当している政治部出身の根本清樹(せいき)論説委員だ。
かつては荒垣秀雄、入江徳郎、疋田桂一郎、深代惇郎 、辰濃和男ら「名文家」と言われた記者が1人で担当した時代が長かった。担当者が増えて交代制になったとはいえ、おおむね夕方までをメドに1日1本コラムを書く重圧は変わらないようだ。