長いこと役人をやっていたので、かつて担当していた分野のニュースは気になる。その中で、最近呆れているのが、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)だ。公的年金積立金の積極運用に転換しようとしているのだ。
最近は株高なので、年金運用ならいいではないかという議論もあろう。しかし、筆者は、官が財テクをするのは、現役役人の時から反対だった。
GPIFは「丸投げ機関」
GPIFは、サラリーマンの厚生年金の運用事業を行う独立行政法人で2006年4月に設立されたが、その前身は年金福祉事業団という特殊法人だ。運用事業は「官の財テク」として1986年度からスタートした。財テク機関の性格は同じだ。
当時、運用を行っていたのは厚生次官の天下り指定席であった年金福祉事業団(年福事業団)。有り余るほどの巨額なカネを使うことから、「満腹事業団」と揶揄されていた。ちなみに、巨額の年金資金をつぎ込み各地でリゾート施設を作り不良債権化させたグリーンピア事業も、年福事業団の仕事だった。
2000年度までの財テク事業の最終的な収支尻は、累積損失約2兆円。官の財テクはこんなもので、肝心の運用実績は上がらなかった。しかし、官の財テク事業もグリーンピア事業と同じで誰も責任をとっていない。
官の財テク機関といっても、官僚が自前で運用できる能力はないので、実際の運用は外部委託して民間金融機関で行っている。この意味で、GPIFは「丸投げ機関」である。ただし、民間機関にとっては、巨額の運用資金を獲得できるので、GPIFやその監督官庁の厚労省は上得意先でメシのタネだ。