日本静脈経腸栄養学会の開催に合わせたプレスセミナー「高齢化時代における栄養療法の役割と有効性」が2014年2月28日、横浜で開かれた。
海外の同じ専門学会から参加した医師らが、栄養不良がいかに病気を増やしているか、医療界での認識が甘いかについて訴えた。
医療費の削減にもつながる
中心になって話したのは南米学会副理事長でブラジルの大学外科教授イサベル・コレイアさん。日本、米国、欧州、韓国学会の代表がコメントを加えた。
コレイアさんは全世界で入院患者の20%から50%が栄養不良で、そのために病気の罹患率、死亡率が高まり、入院期間が延び、医療費が増えていることを各国のデータから指摘した。
手術後の患者は食欲が完全に回復するまでに約6週間かかる。栄養不良の患者は病院食を半分以下しか食べられず、入院中に患者数が増えていく。「病院の患者の10%は栄養不良」なのに多くの医師は正しく認識しておらず、「医原性栄養不良」状態になっている。
栄養不良では褥創(床ずれ)も感染症も増える。食事や栄養剤による栄養補給で、米国では入院期間が21%短縮し、再入院も減り、重度の栄養不良患者の医療費が1人1500ドル削減できた。
コレイアさんは、病院は患者の栄養状態を評価・監視しなければならないとし、医療関係者だけでなく、「患者が栄養療法を要求するようになってほしい」と、国民への啓発が重要だと訴えた。
日本の学会理事長である東口高志・藤田保健衛生大学教授は、入院患者だけでなく在宅の高齢者の栄養の重要性を強調した。しばしば話題になっている「胃ろう」について、日本は英国の10倍も多く、しかも 8割が70代以上であることから、欧米との死生観との違いに言及した。また、栄養療法の保険適用が県によってバラバラな現状を、病院側の努力で改善するよう要望した。
病院食をもっと食べてもらうため、米国ではシェフを雇うようになっているほか、各国とも個別対応を増やし、見ばえの工夫などをしているという。
(医療ジャーナリスト 田辺功)