サッカーJ1浦和レッズ―サガン鳥栖の試合で観客席の入口ゲートに「JAPANESE ONLY」と書かれた横断幕が掲げられた問題で、人種差別だとの批判が大きくなっている。
海外リーグでは、差別に対して非常に厳しい措置が取られる。今回のケースが該当すれば、浦和へのペナルティーも避けられないだろう。
浦和は過去にも人種差別発言で制裁金
横断幕の「JAPANESE ONLY」がどういった意図で書かれたかは不明だ。読み方によっては「日本人以外お断り」ととれる。かつて米国で黒人差別が顕著だった時代、各種施設で「White Only」、つまり「白人専用」と掲げて有色人種の利用を拒んでいた。横断幕は、このような悪しき過去を思い出させるという指摘も出た。
仮に差別発言だとして、誰に向けられたものかも分からない。インターネット上に出回った写真を見ると、掲示された場所は埼玉スタジアムの中、浦和のサポーターが観客席に向かうゲートだ。ここで掲げてもピッチ上の選手の目には触れないので、選手に向けたメッセージなのか疑問が残る。「浦和サポーターは日本人に限る」と言いたかったのか、チームを全員日本人で固めよとしたかったのか。いずれにしろ、外国人排除をあおるなら許されない。
事例はあまり多くないが、過去にもJリーグで「差別問題」が取り上げられたことがある。2011年5月28日に行われた清水エスパルス―ジュビロ磐田戦。磐田サポーターが、清水のゴトビ監督に向けて「ゴトビへ、核兵器をつくるのはやめろ」書いた横断幕を掲げた。監督はイラン系米国人で、当時イランが核開発を国際社会から非難されていたことを中傷のネタにしたようだが、むろん何の関係もない。これをきっかけに両チームのサポーター同士がもみあう騒動に発展した。Jリーグ側の調査の結果、「人種差別発言ではない」と判断されたが、小競り合いもあったためゲームを主催した清水は管理責任を問われて制裁金200万円とけん責、磐田も厳重注意となった。
2010年5月15日のベガルタ仙台―浦和レッズ戦では、浦和サポーター数人が仙台の選手に差別的な言葉を浴びせた。当事者は特定できなかったが、浦和は差別発言で初の処分を受け、制裁金500万円を言い渡された。
欧州ではスタジアムの閉鎖や罰金処分
「フットボールレフェリージャーナル」を運営するサッカージャーナリストの石井紘人氏は、今回の騒動について「日本人サポーターの人種差別発言に対する意識が希薄なのでは」と指摘する。ファンが浦和の戦いぶりに不満を持っていた、有力な外国人選手を獲得しないフロントを批判したかった、という見方もあり、うっぷん晴らしのために大した考えもなく「日本人以外お断り」と書いた可能性もある。とは言え「やってはいけないのは当然です」。
海外では、こうした差別発言への処分は重い。石井氏によると、欧州サッカー連盟(UEFA)では観客によるこうした発言に対して、初回はスタジアムの一部閉鎖、2度目からは全面閉鎖および罰金処分が科せられる。選手やスタッフが発言した場合は、最低でも10試合の出場停止となるそうだ。当事者が出入り禁止に処されることもある。最近でも例えば2013年、イタリア1部・セリエAで、日本代表の長友佑都選手が所属するインテルのサポーターが試合中、相手のユベントスの選手に人種差別的なコールをしたため、後日行われたゲームでスタジアムのスタンドの一部が使用禁止となった。
浦和のケースも、人種差別発言だとJリーグ側が認めた場合、チームを含めて厳しい処分が下るのは間違いない。浦和は初期対応にも批判が集まっており、試合中ずっと横断幕が掲示されたままだった点について石井氏も「気づいた時点でなぜ、すぐ外さなかったのか」と首をかしげる。2010年にも制裁金を科せられただけに、今回2度目の不祥事となれば球団自体が人種差別への問題意識の低さを非難されても仕方がない。