脳科学者の茂木健一郎さん(51)がツイッター上で大学受験予備校を名指しで批判している。
各予備校が公表する「学力偏差値」、これに重きを置く日本の入試や受験産業を問題視したためで、2014年3月8日以降「偏差値を計算する、くされ外道予備校ども、みんなつぶれろ!」などと息巻き、インターネット上で議論を呼んでいる。
「悪の帝国どもが!」と怒り心頭
「っていうか、偏差値とか勝手に計算しやがっている、予備校って、社会に害悪しかもたらさない存在だから、マジでつぶそうぜ。ふざけやがって。お前らが勝手に計算している『偏差値』とかやらで、どれだけ多くの18歳が傷ついていると思っているんだ、このクソ野郎どもが」
茂木さんは8日、怒り交じりにツイートした。発言に至った詳しい経緯は分からないが、この日「よろこびと創造」とのテーマで出演した関東学院大学の講演会で、学生たちとの会話を通じて思うところがあったらしい。
ツイートはさらに続き、「明日、駿台、河合塾、代ゼミ、東進がこの世から消えたって、誰もこまらないじゃん。なくなっちまえよ。何が、偏差値だ。教育者ぶるな。悪の帝国どもが!」、「つぶれろ、駿台、つぶれろ、代ゼミ、つぶれろ、河合塾、つぶれろ、東進ハイスクール、つぶれろ、ありとあらゆる、偏差値を計算する、くされ外道予備校ども、みんなつぶれろ!」などと大手予備校を名指しで罵った。
学力偏差値は筆記試験を重視する日本の大学入試では広く使われている。統計学の手法に基づいた指標で、現在では大手予備校が模擬試験のデータをもとに学部、学科の偏差値を割り出し、難易度ランキングなどとして紹介している。受験生はこれを志望校選びの目安にして、合格可能性の確認に役立てている。
しかし、偏差値だけが重視されるようになると弊害も出てくる。大学が「難易度」の視点でばかり評価されるようになり、受験生が偏差値ランクで大学を決めれば個々の持つ才能を伸ばす機会も失われかねない。茂木さんは「学びの本質が何なのか、全く判っていないやつらが教育界、受験界を牛耳っている」として、筆記試験の単一基準による偏差値入試を問題視。翌9日にはエッセイや受賞歴なども評価する米ハーバード大学の入試システムに言及した。
常見陽平氏「基礎学力向上の励みにもなる」
ツイートは多いもので1万回以上(10日時点)リツイートされるなど、反響を呼んでいる。極論とも言える予備校廃止については「浪人生が困る」「ニーズがなきゃとっくにつぶれているはず」などとして賛同は少ないものの、偏差値問題に関しては賛否両論があがっている。
賛成派からは「大学受験を一律『偏差値高いところから受験』って感じでナアナアで済ませてるのはよくない」「偏差値のせいで日本の若者はみんな同じような人間が量産されてる」「偏差値だけでその人間の価値を決められるのは納得がいきません」といった意見が出ている。
反対派からは「偏差値は一番平等な評価。人物や部活評価なんか主観でしかない」「主観が介入しない数字というのは大事だろ」との声がある。10日には、評論家の常見陽平さんも自身のサイトで言及。大学の魅力は他にもある、としながらも「偏差値というもので受験する大学の目安がなんとなくわかる、自尊心を満たすことが出来ることもたしかだ。基礎学力を向上させるための励みにもなる」として、「偏差値が機能『してしまっている』のは、逆に『偏差値が低くても、良い大学』なるものが少ないことを物語っていないか」などと語った。
反響を受け、茂木さんは10日になって「偏差値入試批判は、学力軽視ではありません。人物を入試で見ろと言っているのでもない。画一的なペーパーテストで学力を見ることが、多様化した現代の学力観にそぐわないと言っている」などと、いくつかの補足ツイートを投稿している。