新時代を象徴する大谷翔平の二刀流。オープン戦では両方とも一段とレベルアップしたとの声が多い。
それが逆に日本ハムの首脳陣を悩ませているという。
投打ともレベルアップした2年目の19歳
打者大谷が豪快なホームランを放ったのは2014年3月4日の巨人戦。3番・左翼手で先発出場し、1回裏二死での初打席で左中間スタンドに打ち込んだ。地元札幌での挨拶代わりの一撃でもあった。
「こすり気味の打球だったので、さほどの手応えはなかった。地元でのさい先のいいスタートということでよかった」
会心の一打ではないとはいえ、外野席へ持っていったわけで、その長打力と打撃センスに改めて驚かせされた。さらに二塁打を、今度は引っ張って右翼線に放った。
守備でも非凡なところを見せた。村田修一の左翼線の打球を捕り、二塁で刺したプレーだ。
先発投手として周囲をうならせたのは7日の阪神戦だった。5回を投げ、2安打1失点に抑えた。
「これまでより自信を持って投げることができる」
大谷はそう胸を張った。実はこの試合、相手の先発は藤浪晋太郎。昨年2ケタ勝利をマークした同期のライバルである。場所は甲子園。高校時代だった2年前のセンバツ大会初戦で対戦し、敗れている。言葉が弾んだ。
「藤浪は昨年、すでに実績を残した。こっちは挑戦する立場で、がむしゃらに投げた。甲子園での思い出はよくなかったので、いいピッチングができてよかった」
昨年は二刀流で話題を集めた。ルーキーだったので興味本位で見つめていた関係者も、1シーズン終わったとき、大谷の素質に改めて納得した。2年目は二刀流を続けるのか、投手か打者か一本に絞るのか、と注目された。
「二刀流でいく」との栗山英樹監督の明言を背に、大谷はキャンプに臨んだ。伸び盛りということもあって投打ともにレベルアップ。それはオープン戦で成果を出したことで分かる。
おそらく投手、打者でどちらかに見劣りがうかがえれば、一本に絞る口実ができたかもしれないが、両方とも合格点では、また使い分けながら起用することになる。
「投手なら先発としてローテーションに入れたいだろうし、打者なら常時出場させたい、というのが首脳陣の思いだ。二刀流で常時出場は体が持たない」
こうした評論家の見方は当然、日本ハムの幹部も同じだろう。皮肉にも、打ってよし、投げてよし、は栗山監督にとって新たな悩みとなった。
大谷が登板するときは代わりの野手を一人使うわけで、その野手は大谷が打者のときはベンチ、ということになり、大谷のスペア選手となってしまう。そうなると「生活権」という別の問題が起こり、チーム作りへの疑問の火だねとなる恐れがある。
昨年の後半は田中将大の敗戦ゼロに焦点が当たったこともあって大谷への関心が薄れたが、今年は再び注目されることになる。楽天のドラフト1位、松井裕樹との投げ合い、あるいは打者としての対戦は大きな話題になるだろう。
(敬称略 スポーツジャーナリスト・菅谷 齊)