「設置ずみ」は6.6%にとどまる
これを防ぐ「感震ブレーカー」は、地震を感知して電気を遮断する装置。(1)分電盤のブレーカーを遮断して電気をとめる(2)コンセントに設置して接続された機器(例えば電気ストーブ)だけを遮断する型がある。(1)は工事費込みで数万~10万円程度、(2)は数千円程度という。また、(3)ブレーカーのスイッチに錘がついた紐を取り付け、震度6以上の揺れがあると、錘が落下し、ブレーカーのスイッチが切れる簡易なもの(1個3000円程度)もある。
分電盤型や錘方式は、出火防止効果は高いが、照明や在宅用医療機器などの電気も止まってしまうので、真っ暗闇になって避難の妨げになったり、病人の生命にかかわったりする恐れもある。コンセント型は電気ストーブなどにつなげば有効だが、他の電気機器でも出火する可能性は残る。それぞれ問題はあるものの、通電火災の予防効果が期待できるのは間違いない。
だが、普及はほとんど進んでいない。内閣府が2014年2月8日発表した防災に関する世論調査によると、感震ブレーカーを設置しているとの回答は6.6%にとどまった。ある大手不動産では、通常、マンションには漏電を自動検知して電気を遮断する「漏電ブレーカー」を設置しているが、「電線が断線した場合など、発火する可能性は少なからずある」と認めている。新築物件でも「感震ブレーカー」を取り付けてはいないという。
行政でも、最近までほとんど問題意識はない。鳥取県は「震災対策アクションプラン」(2010年策定)の予防対策の中に感震ブレーカーの設置を盛り込んでいるほか、横浜市は2013年に、木造住宅密集地域(木密)を対象に、感震ブレーカーの設置費用の半額を補助する制度を設けたが、まだ知られていないため、昨年末時点で申込件数わずか1件にとどまるという。
防災関係者などからは「公費による補助を充実させるとともに、木密など危険な地域を指定して設置を義務化することも検討する必要がある」との声が出ている。また、電気料金に上乗せして電力会社が整備する方法を提唱する専門家もいる。