飲料最大手の日本コカ・コーラグループは2014年2月27日、自動販売機で売る大半の飲料価格を4月から10円引き上げると発表した。消費増税に合わせた措置で、自販機飲料の値上げは1998年以来16年ぶり。
「全体で3%分値上げ」するため、一部の飲料は据え置く。飲料全体における自販機での販売量は減少傾向にあり、値上げによって「自販機離れ」がさらに進む可能性もある。
4月1日以降、全国98万台の自販機価格を順次切り替え
代表商品である「コカ・コーラ」(350ミリリットル缶)は10円値上げして、130円に。500ミリペットボトルも10円引き上げて160円にする。自販機では1円単位の価格設定が難しいため、10円引き上げる。大半の炭酸飲料や缶コーヒーも同様だ。
ただすべての商品を10円上げると、7~8%の値上げになってしまい、「便乗値上げ」と受け取られかねない。このため天然水「い・ろ・は・す」は価格を据え置く。「綾鷹」や「爽健美茶」などの無糖茶は、容量を25ミリリットル増やした上で価格を10円引き上げる。ミネラル水やお茶は、競争が激しい上に、独自性を発揮するのが難しい分野。値上げすれば他社にシェアを食われるとの判断も働いたようだ。
缶コーヒーや炭酸飲料の一部は、小容量タイプを新たに発売し、100~110円で販売する。電子マネー対応の自販機では、5円値下げのキャンペーンも実施する。4月1日以降、全国98万台の自販機価格を順次切り替えていく。
1円単位の端数は切り上げるという転嫁カルテル
業界2位、サントリー食品インターナショナルも原則として10円値上げ。コカ・コーラと同様、「南アルプスの天然水」などミネラルウオーターの価格は据え置く。炭酸飲料「オランジーナ」缶は容量を増やした上で10円引き上げ、緑茶「伊右衛門」「ウーロン茶」のペットボトルは容量を減らした上で、10円引き下げる。容量、価格ともに、自販機での商品が多様化しそうだ。
飲料メーカーで構成される全国清涼飲料工業会は13年11月、消費増税で生じた1円単位の端数は切り上げるという転嫁カルテルを結んだ。すべての商品を一律10円上げるわけではなく、全体として3%分の値上げにすることも盛り込んだ。上位2社の価格政策はこの転嫁カルテルに即したもので、他社も追随する。
清涼飲料の販売量のうち、自販機の占めるシェアは低下傾向が続いている。飲料総研によると、消費税率が3%から5%に引き上げられた1997年当時は、自販機は5割弱のシェアを占めていたのに対し、2013年は3割強にまで落ち込んでいる。自販機の減少分を埋めてきたのがスーパーで、同時期に2割弱から4割弱にまで高まっている。
スーパー店頭と自販機の価格差がさらに広がる可能性
スーパーは価格競争が激しく、自販機では150円で販売されている飲料が、100円以下で販売されることも珍しくない。飲料メーカーは、スーパー、コンビニなどの取引先に対し1円単位で転嫁するため、スーパー店頭と自販機の価格差がさらに広がる可能性が高い。そうなれば自販機離れが一層進むことも考えられる。
利益率が高い自販機での販売が減れば、各社の経営も影響は免れない。値上げによって、どの程度自販機での販売が落ち込むのか。飲料メーカーは不安を抱えて4月を迎えることになる。