ワタミグループの居酒屋チェーン「和民」などのアルバイトの時給が各都道府県の最低賃金と同じ水準だったことが、日本共産党の小池晃参院議員の調べでわかった。
安倍政権の後押しもあって、2014年の春闘では正社員の「賃上げムード」が高まるが、アルバイトやパートタイマーなどの非正規雇用の「懐具合」はまだまだ厳しいということなのか。
他の飲食店平均と比べると100円近い開きがある
「十分に体力がある大企業が最低賃金ギリギリで雇用しているような状態を放置していいのか」――。2014年3月4日に開かれた参院予算委員会で小池氏は、安倍晋三首相にそう迫った。
しんぶん赤旗(3月5日付)によると、小池氏はワタミの賃金を引き合いに、最低賃金にハリ付いているアルバイトなどの時給は、中小企業に限らず、大企業のグループ企業でも少なくないと指摘。ワタミグループの居酒屋の募集時給について、47都道府県の店舗を調査し、このうち13都道府県の店舗で募集時給が最低賃金と同額だったと明かした。
たとえば、東京都八王子市の「和民八王子北口店」のアルバイトの時給は869円。これは東京都の最低賃金と同じ。また、神奈川県の「和民海老名中央店」の時給は868円、埼玉県の「和民飯能北口駅前店」の時給は785円と、いずれも最低賃金と同じ水準だった。
これにインターネットが反応。
「いや、どこが問題なんだ?」
「ぶっちゃけ、飲食業ってみんなそんなもんだと思うよ」
「嫌なら辞めろ」
「安倍ちゃんの賃上げ依頼なんかなんの意味もないわけ。アベノミクス大失敗」
「物価は上昇し続けて、消費税は増税して、解雇規制を緩和して正規雇用が減って、派遣規制を緩和して非正規雇用が増えて、生活保護が増え続けて…」
といった具合だ。
このところ、飲食店などのアルバイト・パートの時給は、人手不足から上昇傾向にある。リクルート・ジョブズの調べによると、2014年1月の首都圏での「フード系」アルバイト・パート募集時の平均時給は968円で、前年同月に比べて9円増え、前月比では3円減だった。
同社の調べは、「タウンワーク」などに寄せられる求人情報の延べ件数がベースだ。1月は首都圏にある3万3216件の飲食店やファーストフード店から集計した。
ワタミのアルバイトの時給と比べると、100円近い開きがあることがわかる。
ただ、J‐CASTニュースの調べでは、前出の「和民八王子北口店」のホール・キッチン係の時給は900円(清掃・仕込みスタッフと高校生の時給は869円)、また「和民新宿大ガード店」のホール・キッチン係は1100円と、地域や職種によっては最低賃金や他の飲食店平均を上回る店舗があるようだ。
「理解できない政治家がいるのも仕方ありません」
とはいえ、それでなくてもワタミは「低賃金で、仕事が厳しい」とされ、それによってブラック企業よばわりされてもいる。
ワタミの創業者で自民党参院議員の渡邉美樹氏は2014年3月6日、自身のフェイスブックで、こう反論した。
「そもそも共産国家でない日本は、あの企業で働きたくないと烙印をおされ、経営がなりたたないリスクとも、経営者は常に向き合っています。
内部留保に関しても、中長期で企業を維持、発展させる責任が経営者にはあります。
経営者視点の発想、事情が理解できない政治家がいるのも仕方ありませんが『レッテル貼り』によって、日々の政治活動や経営がブレたり影響を受けることはありません」
ワタミ広報部によると、アルバイトの時給は、「職種ごと、地域の相場などから店長が提案し、エリアを統括する責任者が決定します」という。
最低賃金の水準については、「ほとんど(の店舗)が最低賃金を上回る採用時給となっていますし、また店舗内でも昇給制度を設けており、技能の習熟に応じて昇給があります」と説明している。
アルバイトの時給について、労働問題に詳しいジャーナリストの小林美希氏は、「まず前提として最低賃金の水準が低いことがあります。いまはアルバイトなどの非正規労働者として生計を立てて人が増えているのが現実。そこを理解しないと。知名度の高い企業が払えるのに払わないのであれば、それは企業の社会的責任を果たしていないといわれても仕方がないでしょう。知名度があるから、『賃金を上げなくても、人が集まる』という考えが透けて見えることが残念です」と話している。