楽天のドラフト1位、松井裕樹が好投している。
ヤンキースに行った田中将大の穴を埋めるという大役が期待される中、開幕一軍は間違いなさそうである。
星野監督の故郷、倉敷で好アピール
松井のことになると、星野仙一監督の顔が緩む。
「想像以上に仕上がっているな。(心配していた)抜け球が減った。実践向きのピッチャーだよ」
2014年3月5日にオープン戦2度目の登板。ロッテを相手に5回を4安打、無失点。その内容に喜んだ。この試合は星野監督の出身地である倉敷。自分の「秘蔵っ子」としてのお披露目だったのだろう。
「点を取られていないのはいいアピールになっていると思う」
そう振り返る松井はこの試合を含め、7イニングで点を与えていない。無我夢中なのだろうが、やはりただ者ではないといえよう。
なんといっても武器の大きなスライダーが効いている。打者のほとんどがまるでタイミングをとれない。つまりスイングをさせてもらえないのだ。
課題は速球のコントロール。これでストライクを取れないと、ピッチングを組み立てられないし、スライダーが生きてこない。苦し紛れにスライダーに頼るようになると、狙い撃ちされてしまう。
佐藤義則投手コーチが指摘するのは、踏み出す左足の位置。投げるたびに三塁側へ体が流れるところをキャンプの初めから矯正している。それがよくなって抜け球が減ったということなのだろう。
連覇を目指す楽天の最大のポイントは田中の穴をどうやって埋めるか。なにしろ昨年は24勝無敗。いわゆる「貯金24」で、これを補うのは並大抵のことではない。
その対策は星野監督によると「松井をはじめとした若い投手に期待」となる。松井への期待は大きいし、ファンもそれを望んでいる。
楽天からすれば、松井を大々的に売り出したい。田中が登板する試合はスタンドが埋まった。それを松井が継ぐことができるか。18歳の新人投手と田中を比較することは酷な話なのだが、ファンとはそういうものである。
海の向こうで田中はすでにオープン戦で2度投げている。それなりの内容を残しており、2ケタ勝利は間違いないとの評判だ。
「松井は田中のピッチングと比較されながら今シーズンを送ることになるだろう。注目選手の宿命だ」
評論家の先生方はそう見ている。
スタートでつまずくことがなければ、松井は戦力になるだろう。そして「田中マーくん」から「松井ユーくん」として話題になるはずだ。
(敬称略 スポーツジャーナリスト・菅谷 齊)