仲人が見直されている理由 「おせっかい力」で「結婚難民」救う
「日本仲人協会」中西圭司理事長に聞く

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   「婚活ブーム」と言われる。背景には「結婚したいなら自分から行動を起こすべきだ」という考え方があるようだ。「結婚相手相談サービス」も花盛りで、その敷居も低くなっている。

   ただ、それでも婚姻率や件数に回復傾向はみられず、独身者は相変わらず苦戦を強いられている。そうした中、日本ならではの「仲人」が見直されてきているという。どうしてなのか。業界トップクラスの仲人ネットワーク「日本仲人協会」の理事長・中西圭司氏に聞いた。

仲人は日本生まれの「婚活プロデューサー」

「日本仲人協会」理事長・中西圭司氏
「日本仲人協会」理事長・中西圭司氏

   ――「仲人」と聞くと「結婚式で2人の馴れ初めを話す人」というイメージがあるのですが、そもそもどのような役割を担うのでしょうか。

中西 それは戦後から増えた「頼まれ仲人」ですね。恋愛結婚で式を挙げる2人が知人や親せきに頼んだ「形式上」の仲人です。本来の仲人は地域のおじさんやおばさんがボランティア感覚でやっていたもので、お見合い相手の紹介から、交際のアドバイス、結納、そして挙式の立会までお世話をしていたんです。それでご祝儀やお車代をいただいていた。鎌倉時代にはすでに仲人がいたとされているんですよ。日本人は昔からお世話好き、おせっかいなんですね。

   ――日本伝統の婚活プロデューサーといったイメージですね。現在の仲人はどのような役割を果たしているのでしょうか。

中西 大きく変わったのは、相手探しの方法です。戦後、女性が社会進出し始めるとともに、女性の希望するレベルがだんだんと高くなり、顔の広い地域のおじさんおばさんでは簡単にまとまらなくなった。そこで、仲人同士がネットワークをつくり、互いがお世話している独身者情報を共有するように変わりました。今では個人、中小企業含め、ほとんどの仲人業者がそうしたネットワークに加盟しています。

成婚率が10%以上と高いのが強み

   ――日本仲人協会もそのうちの一つ、ということですね。

中西 私はもともと呉服屋で、仲人業は「結婚を取り持ったら着物を買ってくれるだろう」と思って始めたんです。当時としては非常に珍しかった「成功報酬型」の料金体制が評価され、92年には仲人加盟組織「日本仲人協会」を設立しました。特にここ5年は婚活ブームもあり、加盟仲人が急速に増え、14年で約1100人が加盟する日本最大級の仲人ネットワークになりました。それでも会員数は約1万と大手結婚サービスの約4分の1程度ですが、成婚率は業界平均5%前後に対し、10%以上と高いのが強みです。

   ――「成功報酬型」をなぜ採用したのでしょうか。

中西 結婚相手の情報提供を主眼に置いた大手サービスは、2年契約で40万円、というように入会金や月会費をまとめてもらう「先払い型」が昔も今もほとんど。でも、結婚が決まる前に大金を取るのはおかしいなと感じていました。利用者のハードルはもっと低くあるべきです。仲人の仕事は、結婚が決まるまでなんです。、だから加盟仲人には月会費の先取りを禁止し、結婚が成立して初めて謝礼として成婚料(最大30万円)をもらうようにしてもらっています。他の費用も上限を定めていて、入会金は3万円、月会費は1万円。そうすれば会員は初期投資の必要がなく、同時に金銭面でのトラブルも起きにくいというメリットもあります。

   ――ただ、収入面で仲人にはどうなんでしょうか。

中西 仲人業は「副業」であるべきだと思っているんです。お金のことがあるとお世話にも力が入り過ぎてしまい、独身者の気持ちに寄り添えなくなってしまうケースも出てきますから。そのかわり、他のネットワークと違い、当協会では、加盟仲人からも大金を取らないんです。
   当協会でも50万円の加盟金を設定してはいるのですが、私が毎月全国で開催しているセミナーに参加した上で加盟すれば、その加盟金を無料にしています。セミナーは協会の理念と法令順守をしっかり理解してもらうために必須なのです。50万円は大きいですから、皆さん揃って参加します(笑)。ですので、仲人は会員と同様、大きな初期費用なしで仕事を始められるんです。

   ――仲人は誰でもなれるものなのでしょうか。

中西 当協会の仲人は全員0から始めた人たちです。加盟に特別な資格はいらず、話すこととお世話が好きで、マメであれば、誰でもなれます。定年退職したお父さんやパート感覚で始める主婦、副業するOLさんも多い。年齢も関係ないので、下は24歳から上は91歳と幅広いのです。

少子化対策にも貢献、目標は加盟仲人1万人

独身者の結婚意思(国立社会保障・人口問題研究所「出生動向基本調査(結婚と出産に関する全国調査)」
独身者の結婚意思(国立社会保障・人口問題研究所「出生動向基本調査(結婚と出産に関する全国調査)」

   ――プロの立場からみて、今「仲人」が求められている理由を聞かせてください。

中西 最近では「草食男子」なんて言いますが、日本の男性は元々シャイなんです。自ら行動して結婚までこぎ着けるのは今も昔も2~3割。昔は、近所の人や会社の上司、親戚といった第3者が若い2人を引き合わせて背中を押していたんです。今、必要とされているのは周囲の「おせっかい力」なんです。実際、35歳未満の独身者のうち9割近くが結婚を希望しています。「自分が結婚したいと思った時が適齢期」なんて言いますが、世の言う適齢期になったら危機感を持たせた方がいいんです。まわりももっと尻を叩いてあげるべきです。

   ――今後の展望をお聞かせください。

中西 上限付の成功報酬型にしているのには、社会貢献としての意味も大きいんです。加盟仲人への負担を少なくすることで加盟数が増えれば、会員数も増え、お見合いの機会が増え、成婚率もアップします。日本では少子化が深刻化していますが、結婚した夫婦の子供の数(完全出生児数)は減少傾向とはいえ2010年で1.96人。つまり結婚している人は、だいたい2人は産んでいるんです。現在、結婚相手紹介サービスの入会者は、20~40代の適齢期独身者1800万人に対し、60万人程度。私たちは、深刻な少子化問題の解決につなげる意味でも、世話好きの仲人を全国で復活させ、日本社会の未婚化をストップさせたいと考えています。
   加盟仲人1万人、会員数10万人という大きな目標を掲げ、がんばっていきます。

〈中西圭司氏 プロフィール〉

   なかにし けいじ 1953年、呉服屋の次男として大阪に生まれる。京都産業大学卒業。30歳で結婚した当時、アルトマンを筆頭として結婚情報サービス会社が次々と誕生、入会金30万~40万円といった高額な料金を疑問に思いつつ、この頃から始まった少子化問題の一助になればと、1984年、入会金を低価格に設定し、誰でもが利用しやすく、しかもまじめに結婚を願っている方のための「成功報酬型」の結婚相談所を開設。その後、1996年に、株式会社日本仲人協会という仲人加盟組織を作り、自分の理念に共感する仲人を集めることで、多くの「結婚したいのに良い相手が見つけられない独身者」を成婚に導いている。著書に「はじめての仲人ビジネス」。

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