みずほ銀行が、2016年3月末としていた基幹システムの統合を、約1年延期する方針であることが明らかになった。開発作業に思った以上に時間がかかっているためだ。
ただ、他のメガバンクはとうにシステム統合を終えている。旧行意識が根強くなかなか融合が進まないみずほを象徴するような事態に、金融界では「本当にみずほは大丈夫なのか」と心配する声も上がっている。
他のメガバンクは統合完了
第一勧業、富士、日本興業の旧3行が経営統合に合意したと発表したのは1999年8月にさかのぼる。従来予定していたシステムの統合は2016年3月だから、それでも合意から16年超かかる計算だが、さらに1年先送りになる。
他のメガバンクでは、1999年に旧さくら、旧住友が統合に合意し2001年に発足した三井住友銀行が2002年にシステムを統合。複雑な再編劇の結果生まれた三菱東京UFJ銀行も2008年にはシステム統合を完成している。形態は商業銀行ではないが、2012年4月に発足した三井住友信託銀行も、2014年内をめどにシステム統合を完了する予定で、みずほから見ればかなり後方のランナーに追い抜かれる事態になっている。
預金や融資などで資金の出入りを司るシステムを統合することは、効率運営につながるだけでなく、利用者に新たなサービスを提供する基盤ともいえる。他社との競争上、「周回遅れ」が長く続くのが望ましくないのは明らかだ。費用も従来は2500億~3000億円と試算していたが、数百億円規模で膨らむ見込みで、収益も圧迫しそうだ。
2002年と2011年の2度にわたって大規模なシステム障害
みずほにとってシステムは負の歴史でもある。何と言っても2002年と2011年の2度にわたって大規模なシステム障害を起こし、2度とも金融庁から業務改善命令を受けたことが経営の痛手となっている。その都度、「旧3行の縄張り意識が強く経営に一体感がない」ことが背景にあると指摘された。
2002年の障害は、持ち株会社傘下の旧「みずほ銀行」と旧「みずほコーポレート銀行」のうち、旧みずほ銀行で起きた。当時の旧みずほ銀行は、旧富士と旧第一勧業のシステムを併用しながら少しずつ旧第一勧業に一本化する最中。この一本化の完了は2004年12月まで待たねばならなかった。それでも3つのうち2つの統合だ。
旧みずほ銀と旧みずほコーポレート銀は2013年7月に合併し新たな「みずほ銀行」となった。しかし、旧第一勧業と旧日本興業の2系統のシステムを生かし併用する状態のまま。それでも合併前日には、本社勤務のほとんどの行員が社内や近くのホテルに泊まり込んで万一のトラブルの備える念の入れようだった。「過去2度起こしたトラブルの再来は決して許されない」(みずほ幹部)からだ。
システム提供社が複数に及び、責任者がだれか分からない?
ただ、金融庁の指導もあり、みずほとしてもシステムの統合を急いでいた。何しろ手直ししてきたとはいえ「旧第一勧業」「旧日本興業」などと前世紀の遺物。老朽化も目立つからだ。統合後のシステムは旧システムを廃棄し、新たなシステムを構築する計画だ。
その新システム開発に時間がかかっていることが今回の延長につながった、いうわけだ。なかでも金融界でささやかれているのが「システム提供社が複数に及び、責任者がだれか分からない。これでは前に進みにくい」という問題。確かにみずほはNTTデータや日立製作所、日本IBMに共同発注しているが、こうしたことはあまり例がないという。いくらデータ処理量が多いといっても、発注先の船頭が多くなってしまっては、先行きを心配する向きが出るのも無理はない。今から3年後に先送りしたというのに、それすら本当に実現するのか、不安視する声も出始めているのが現状だ。