企業の倒産が「歴史的低水準」(日経新聞2014年2月11日朝刊)に落ち着いている中で、休廃業が急増している。
安倍晋三首相は「倒産は減っている」とアベノミクスの成果を誇示し、賃上げなどで景気回復の「好循環」を全体に広げていこうとしているが、休廃業は「隠れ倒産」とも指摘されるだけに、警戒する声も強まっている。
「隠れ倒産」ともいわれる
民間信用調査会社の東京商工リサーチのまとめ(2月10日)によると、2013年の休廃業・解散件数は前年比4.0%増の2万8943件で、過去10年で最多を記録した。2013年の倒産件数は1万855件と5年連続で前年を下回り、1991年以来22年ぶりに1万1000件を割り込んだが、休廃業・解散は年々増加をたどり、2013年は倒産の2.6倍にも達するという対照的な動きをみせている。
商工リサーチは「休廃業」を、資産が負債を上回る「資産超過」状態での事業停止と定義、「解散」は事業継続を断念する点では倒産と同じだが、資産に余力を残す状態で清算手続きをとるケースもあるとして、いずれも「倒産」の集計にカウントしていない。休廃業であれ、解散であれ、個々のケースはいろいろだが、多少の余力は残しているとしても、限りなく倒産に近いものも多く、「隠れ倒産」(エコノミスト)と言われたりもする。
倒産件数の減少については、一般に(1)景気回復、(2)経済対策に伴う地方の公共工事増加、(3)中小企業金融円滑化法の終了後も銀行などが融資条件の変更に柔軟に応じている――などが理由として挙げられる。他方、休廃業や解散の増加は、事業不振や後継者難など様々な要因が指摘される。
建設業が3割占める
2013年の休廃業・解散を産業別にみると、建設業の8535件(構成比29.5%)と最も多い。建設業の倒産件数は5年連続で前年を下回り続けており、2013年は休廃業・解散が倒産の3.5倍にも達した。公共投資が拡大し、民需も住宅需要などで活況を取り戻しているが、「長引いた業績低迷で体力が脆弱化したところに、昨今の人手不足、労務費や資材高騰が重なり、先行きの見通し難から事業継続を断念したケースが増えたとみられる」(商工リサーチ)という。
次いで、飲食業や宿泊業などを含むサービス業他が6497件、小売業3991 件、製造業2857件と続く。サービス業他は、零細規模の飲食業などが多く、小売業も価格競争が厳しさを増しているという。
地区別の休廃業・解散をみると、9地区のうち北海道と東北を除く7地区が前年を上回った。増加率では北陸の29.4%増を筆頭に、四国17.6%増、中部13.3%増の順。震災の復興工事が進む東北は、前年の2200件から1768件へと約2割減ったのが目立った。
4月以降さらに増える恐れ
倒産も休廃業・解散も、圧倒的多数は中小企業であり、問題はアベノミクスの恩恵がどこまで浸透しているのか。その点で、衆議院調査局が1月に発表した企業動向等に関する実態調査(2013年11月末実施、1万493社回答)で、「アベノミクスにより貴社の業況にどのような影響が出ていますか」との設問に、「好影響があった」との回答が大企業では4割近くあったのに対し中小・小規模企業では2割強にとどまっており、休廃業などを押し上げる一因になっている可能性がある。
いずれにせよ、倒産と休廃業・解散を合計した件数でいえば、2008年のリーマンショック以降、年間約4万件の高水準が持続していることになり、商工リサーチは「中小・零細企業の実態を把握するには休廃業・解散の動向にも目配りが必要だ」と指摘している。
中小企業団体からは「円安による原材料価格の上昇を価格に転嫁できないなど厳しい状況にあり、4月の消費税増税による景気の落ち込みで、倒産も休廃業も増える恐れがある」と警戒する声が出ている。