形や色が悪いため売り物にできない、いわゆる「規格外」の農産物。商品にならなくても味には問題ないので、自宅で消費したり、家族や知人に譲ったりする。
そんな「規格外」のイチゴの写真が、「汚染されたもの」として「脱原発派」に取り上げられたため、ネット上で思わぬ騒動になってしまっている。
昔からある形という指摘には「そこが汚染されている証明」
2014年3月2日、2ちゃんねるに「商品として出せないイチゴを農家の人からおすそわけされた」という主旨のスレッドが立った。紙箱にたくさん入ったイチゴの写真も掲載されたが、複数のイチゴがくっついて大きくなったようなものや、扇のような形に広がって筋が入っているようなものが並んでいる。
この写真を、脱原発を訴えるあるツイッターユーザーが「奇形」「脱原発」というワードとともに、同じく脱原発を訴えている、フォロワーが多いユーザーにリプライで送りつけた。
リプライを寄せられたある脱原発派の医師が、このリプライをリツイートした上で「すごいなこのイチゴ。露地栽培なのだろうか」と反応すると、脱原発派から「何か形悪くて気持ち悪い。私も似たようなの見たことあります。汚染ではないでしょうね?」「これは、異常だ!食べちゃダメ!」など、放射能の影響ではないかと考えているようなコメントが寄せられた。
一方、「昔からこういう形のイチゴはよくありましたよ」「食べると美味しいですよ」などのリプライも寄せられたのだが、医師は「昔から奇形がたくさんあると、自慢しておられる方がいるが・・・ そこが、もともと汚染されている証明にすぎんのだよね。それは」などと独自の見方を示した。
医師の態度を批判するコメントが寄せられるようになると、「このイチゴの奇形は、よほど困るらしい。(批判が)雲霞のように押し寄せてきている。実際にものがあるのに、『風評』と呼ぶ。おかしいね」とツイート。これを、経営コンサルタントで約17万人のフォロワーを抱える宋文洲氏が「風評とは聞きたくない事実。捏造とは見たくない現実」というコメントを付けて引用したことで、ますますイチゴ写真が広まった。
窒素の効き過ぎやホウ素の欠乏などで扇のような形に
写真で紹介された扇のようなでこぼこのイチゴは、「鶏冠果(けいかんか)」と呼ばれる。にわとりのとさかに似ていることからこの名前が付いた。
高知県が運営する農業情報サイト「こうち農業ネット」には、「花芽が分化する時期の窒素の効き過ぎやホウ素の欠乏などによって起こる」と書かれている。
すぎやまいちご園(神奈川・平塚市)の公式サイトでは「花芽の時に、次の弟や妹の花芽とくっついて、大きくなったものです。株が大きく、栄養が良いとできやすいものです」と説明されている。11年1月、舞岡いちご園(横浜市)の公式ブログでも、「握りこぶしみたいにでこぼこのいちご」「手袋の様ないちご」と写真付きで紹介されていた。どちらのページにも「食べるととても美味しい」とも書かれている。
今回の写真が騒ぎについて、イチゴ農家の関係者だというツイッターユーザーからは、
「私がちびっ子だった2-30年前でもおじいちゃんの畑(イチゴ農家)でよく取れてたなあ。あれ美味しいのよ~。生産してない人には珍しい?」
「店に並んでる形のいいイチゴの倍以上規格外がでるのが当たり前であります。形悪い方がおいしかったりするんだけどもね。(イチゴ農家の孫より)」
「こんなイチゴ、父方の伯母(イチゴ農家)の家ではよく見たけどねぇ」
といった声が上がっている。