北関東まで被害が広がる
では「2cm未満」の地域は安心かというと、そうではない。数ミリ単位の降灰でさえ、さまざまな影響を及ぼす可能性があるようだ。気象庁の火山噴火予知連絡会の藤井敏嗣会長は2014年3月3日、報道番組「深層NEWS」(BS日テレ)の中で「火山灰が5ミリ積もっただけで、車は坂道を上れなくなる。高速道路では、深刻な渋滞が起きる」と指摘した。
気象庁地震火山部火山課の長谷川嘉彦氏は「交通機関ではミリ単位の堆積でも障害が出ると想定できます。車の場合はスリップしてしまうことが多いと思いますが、灰が舞い上がって視界不良になるケースや、エンジンが灰を吸い込んで故障してしまうケースも考えられます」と話す。
過去の事例がそれを裏付ける。1980年に米ワシントン州のセント・ヘレンズ山が噴火した際には、堆積厚6mmで高速道路が2日間にわたり完全閉鎖された。視界不良や自動車のエンジン故障が主な原因だったそうだ。また、1995年には、鹿児島県の桜島でも堆積厚7~8mmで九州自動車道が高速道として機能しなくなり、降灰除去のために約1日通行止めとなった。
健康被害はどうだろうか。長谷川氏は「舞い上がった灰を吸って、呼吸器官に影響が出ることはあるでしょう。セント・ヘレンズ山の例では、6mm積もった段階で鼻やのど、眼の異常を訴える治療患者が増えました」という。
内閣府の防災マップでは2cm未満の範囲は示されていない。これを数ミリまで考慮すると、富士山噴火のもたらす影響の大きさがさらに甚大なものになる。長谷川氏はミリ単位で積もるところは、風向きによって変わるものの茨城県など北関東の方まで及ぶと想定する。富士山周辺の被害と比べれば軽いものの、油断はできなそうだ。